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ハイジ アルプスの物語のMelkoのレビュー・感想・評価

ハイジ アルプスの物語(2015年製作の映画)
3.9
クララが立ったーー!!!
みんな知ってる、愛と勇気と思いやりの山の子ムービー。

結末を知っていても、泣ける。

実家にある高畑勲版ハイジ(ダイジェスト版)で育った私。ダイジェスト版で見慣れてるから、話のコンパクト感は特に気にならず。ただ、全人類の郷愁を誘うであろう、ペーターのおばあさんとハイジの絡みが少なかったのだけ残念かな…あそこまでしてハイジが白パンをおばあさんに届けたかった情熱とカタルシスが控えめになってしまったので、おばあさんエピソードはもう少し丁寧に描いて欲しかった。欲を言うなら。

頑固で人の言うことを聞かないせいで村の人から目の敵にされているおんじ。
Civilizedされて帰ってきたハイジを見るにつけ、「よく帰ってきたね!」と手のひらを返したように出迎える村人達に、世の中良い人ばかりではない現実を見る。卑しさと人の業。

デーテおばさんがホントにやな奴。
お荷物だからとおんじの元に置き去りにされ、お金のためにお屋敷に売られるハイジ。アニメではマイルドだった描写が、実写になると悲壮感が増す。
「わたしは要らないんだって…」と訴えるハイジよ。。
来たくもないのにお屋敷に連れてこられ、頼んでもないのに食事のマナーや文字の読み書きを叩き込まれる。このロッテンマイヤーさんは美人だから嫌味が半減な感じ。スッピンのレディガガって感じで大人しめ。
「わたしにはあなたしかいないの、ずっとそばに居て」というクララも、可愛い子なんだけど、このセリフはメンヘラちっくで、「おいおいそんなこと言わずに帰してやれって…」と感じた。
お屋敷の人たちはセバスチャン始め基本的には気の良い人たちなんだけど、「お嬢様は病気なの。あなたのせいよ。」はないよ…大人気ないよ…

山を見たい。窓を開け、塔に登るハイジ。でも山は見えない。
アニメでは見れず、絵本で知った、ハイジが山へ帰ることになった理由。ホームシックからの夢遊病。
わたしも小さな頃、外国でホームステイした時に強烈なホームシックにかかった。ご飯も喉を通らず、何も楽しくなかった…私の場合は徐々に楽しくなって回復したけれど、その順番がもし逆だったら。「心の病」と言われるのも頷ける。

ハイジが山を気に入ったことを見抜いたおんじも、文字の読み書きの大切さを説き、ハイジが山に帰りたがってることを見抜いたクララのおばあさんを見ても、年配者の「人を見る力」は馬鹿にしてはいけないなと思いつつ。

大空と大地。草と花と動物達。
怪我することを恐れて家の中に引きこもるよりも、野原を駆け回り新鮮な空気を吸えば、心が軽くなる。実写の自然の説得力。
散々大人に振り回されたハイジが、自分の居場所を自分で決められた時、やはり涙が出た。どんな子どもにも、そうであってほしい。

あ〜自然に癒された良い作品だったから…できれば字幕で見たかったなあ…吹き替えしかなかったのだけ残念。
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