元がテレビドラマなせいか本来は1クール必要な話を無理矢理90分にまとめたような違和感はあるけれど、中平康監督によるテンポのよい話がサクサク進むリズミカルな演出と姫田真佐久によるさりげないけれどよくよく見るとかなり高度なテクニックを駆使した撮影、主役三人による上手さより勢いを重視した溌剌とした演技により見ごたえのあるホームドラマに。
冒頭の子供たちの起床から学校に向かうまでの何気ないルーティングのなかに主人公である兄弟三人の各々のキャラクターをさりげなく紹介していくのが凄い、あと表彰状のくだりで笑いをとりつつ三人の性格を明確にあらわし、そしてその表彰状が後半重要なアイテムになることを示唆する演出にも唸らされる。
『不良番長』のふざけたチンピラとは全く違う鈴木やすしや『大荷物小荷物』の人という印象が強い中山千夏も生き生きとしているけれど、それ以上に倉本聰ならではの台詞回しを中平監督が要求する勢いの演技両方をこなしていく市川好郎の演技が圧巻。
ラストは「そこで終わるの?」と困惑するが、ちょっとゴダールを意識したような演出にシナリオ通りを要求してくる倉本聰に対する中平監督の意地を感じた。
脇役なのに他の役者とはオーラが段違いな松原智恵子や社会に除け者にされゆく老人の悲哀を醸し出す嵯峨善兵、髭がないので一瞬誰かわからなかったけれど笑顔で判別できる子役時代の前野霜一郎、達者な歌声を披露して映画ファンの心を掴む小沢栄太郎、ほんの一瞬だけ登場してインパクトを与える渥美清も見所。
あと鈴木則文や石井輝男以前に糞ネタをやっているとは…、しかもそこに松原智恵子がいるのが新鮮。