さむ

続・深夜食堂のさむのレビュー・感想・評価

続・深夜食堂(2016年製作の映画)
5.0
冒頭から喪服姿の人々の登場。
多くの大切な人が亡くなった2016年という憂うべきこの年を、言葉は悪いが、なんだか象徴しているように思えた。

私自身、今年の初めに大きな悲しみを負った。

横に並んで一緒に鑑賞した前作の『深夜食堂』。
前作の公開当時は、まさかこの続編ができるとは思わなかったし、その続編をたった一人で観ることになろうとは、思いもしなかった。

2016年という年は、死と喪失を扱った邦画が多い。だが、そのどれもが、どこかに生のキラキラした残像を残していて、観ていて却って辛くなる映画も少なくなかった。
大きな喪失感を埋めようと、たくさんの映画を観に何度も映画館に足を運んだのだが、多くの映画は、遺された者に対して優しくはなかった。
遺された者の中で、死者に対する「後悔」「言い訳」「再生への躊躇」から逃れられる人間は、おそらく一人もいないはずだ。わざわざ、説教してくれなくてもいいのである。

今作品。
死、喪失、遺された者の生活をきちんと描いている。

不破万作の最後の名台詞。そしてエンディングテーマの最後のフレーズ。
背中を押すのではなく、優しく肩に手をかけてくれた。

「俺の後を追わずに、あんたらしく歩いてくれ」
大好きだった映画を通して、天国からそう語りかけてきたのが聞こえたような気がする。
さむ

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