くもすけ

緑色の部屋のくもすけのネタバレレビュー・内容・結末

緑色の部屋(1978年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

原作はヘンリー・ジェイムズ、脚本はドリュオー。映画の舞台は一次大戦後のフランスにかわり、激戦を生き延びてやっと結婚したばかりの妻を亡くして鬱と無神論に取り憑かれた男ジュリアンの話。トリュフォーが自画像を熱演する最後の主演作。

原作では教会で出会うらしい喪仲間セシリアとは彼女の勤める故買屋で知り合う(実は10年前に会っている)。で喪中の二人はその喪哲学ゆえ距離を詰められないでいるが、墓地でばったり鉢合わせして静かに惹かれ合っていく。このシーンの最中脳内でcemetery gatesが流れてた。

ジュリアンは単に亡き妻を偲ぶやもめとは言い難い、破綻した性格。基本居留守で部屋と墓地に引きこもり、同居しているろうの少年に戦場の死骸を見せて暇をつぶし、新たな伴侶を持つ友人を蔑み仕事も放り投げてしまう。
一方故人崇拝に没頭して妻を象る聖像を発注し(結構良く出来てるので仕上げは自分でやればいいのに気に入らず破壊)、落雷!で居場所を失った妻の肖像画を、廃墟を改築したマイ祭壇に祀る。

サプライズだよと言って祭壇にセシリアを誘い、まんざらでもない彼女が目隠しでもしようか?とおどけるも、「そういうんじゃないから」とマジなジュリアン。いざ自慢の祭壇を誇らしげに案内するも、節操なく合祀された肖像たちを見たセシリアから「一つにすれば」と言われてしまう。

トリュフォーは「大人は」で居間をカーテンで仕切った慎ましい祭壇にバルザック飾ってたが、今作ではトリュフォーのアイドルたちが惜しげなく祀られている。もはや大戦関係ないセレクションの際念頭にあったのは、撮影直前に死んだメンター2人バザン、ロッセリーニだとか。するってーと「かつての友人」漁色家マッシーニは、、

死者しか愛せない二人がたどる運命は至極合理的で、一見ロマンチックなセシリアのセリフ「いつかあなたの蝋燭に火を灯してあげる」を地で行く鼻血も出ない結末。原案のひとつ「友達の友達」では自殺がほのめかされているが、視点の問題もあってか映画の脚色はかなり難航した模様。トリュフォーはタイトルの意味を聞かれてとぼけてるが、誰の目にも明らかなそれはオタクの部屋