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チア☆ダン 女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話のMCATMのレビュー・感想・評価

4.0
色恋動機で入部してチャラけてたひかり(広瀬すず)が、戦力外として一人外された舞台。円陣でいつも通りメンバーを勇気づけてから大舞台に送り出すと、その背中を眺めながら涙がこぼれないように天を仰ぐ。無難な監督ならもう5秒早く切るし、無難な役者ならこの5秒は持たなかった。終始、この手の信頼感をバトンのようにして繋いでいった結果、序盤の浮ついた演出も、いつの間にかシリアスの影をまとい、俺はもう正座で号泣でした。つか、前半と後半で、監督変わってない??

この物語全体を通して「人間は行動を以て成長していく」という原則が忘れ去られることは決してない。山崎紘菜はストリートでのダンスを通して笑顔の理由を見出すし、荒れた家庭環境の犠牲となっている富田望生は遂に母親に言い返す(この「遂に」と当然のように信じ込ませるのも高等テク)。全治2ヶ月の怪我を負ったひかりも、遅れを取り戻すべく必死に稽古しなければ絶対にチームに戻ることは叶わない。そして、絶対的チームリーダー足るあやの(中条あやみ)は言わずもがな。ビリビリに破けて、テープで補強してある「夢ノート」に、その徴がある。

若い役者陣の熱演(マジで熱演)に、受けの演技を崩さなかった天海祐希の演技と、そのバックグラウンドが徐々に明るみになってくる終盤の展開は、誤解を恐れず言うなら「圧巻」。ベタベタな「種明かし」に見えるかもしれないが、そのベタさを真正面から受け止めつつ、円陣の際の微妙な距離、手の位置、背後に配置した人物の表情、などで裏側でも巧みにオーケストレーションしてみせる。

どうか、前半の印象(世界一ダサいタイトルフォントとか、どんくさい効果音とか、怪しい福井弁とか、不満を記号化したような「リンダリンダ」とか)で諦めずに、最後まで観て欲しい。数年ぶりに観てハラハラしていた俺も、やはり後半はその見事さに(泣きながら)感心していた。

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