ポンコツ娘萌え萌え同盟

猿女のポンコツ娘萌え萌え同盟のレビュー・感想・評価

猿女(1964年製作の映画)
3.9
本作をどうしょうもないクズの男アントニオと、多毛症で猿みたいな見た目の女マリアの色々ありながらも次第に愛が芽生えるラブコメディと捉えるか、
それとも本作が知識・倫理観が現在より未発達で、人権侵害の強い世界を捉えた社会風刺的ラブコメディと捉えるか。
イタリア公開版、ディレクターズカット板、フランス公開版で3つに分岐するエンディング(悲しい最後、皮肉的な最後、幸福な最後)を立て続けに鑑賞し、どれを正とするかで大きく印象が変わりかねない不思議な作品。
スッキリ終わるのはハッピーエンドのフランス公開版だろう。だがそれではマリアへの過酷な人権侵害と本作の知識と倫理観の低さを捉えた世界に納得いかない。

結局私が納得行ったのはディレクターズカット版だった。
イタリア版のアントニオとマリアの表情にフォーカスあて、その直後で終わりの悲しい最後もいい。だが本作の結局のところアントニオが蒔いた種は精算されない。
序盤こそ彼はマリアを商売道具にしか扱わない。
他にもパワハラ、セクハラ、差別発言、人権侵害が至る所に横行する世界に嫌気が差す。
特にアントニオは観ていて非常にヘイトが貯まるくらいに。見世物小屋場面なんて溜まったもんじゃない。
結局ラブコメに落ち着いたところで彼がしてきた過去の仕打ちは消えない。
だからこそ彼に見せた表情と最悪な役割を再度演じることになる皮肉的な最後を自分は好んだ。

そんな作品だが金の亡者でどうしょうもないクズのアントニオのキャラクターを見事に描ききったウーゴ・トニャッツィも、多毛症の女、ヒロイン、見世物、猿真似から挙げ句はヌード劇まで演じできたアニー・ジラルドの主演の二人が公演だったのは間違えない。
またカメラークもよくできていて、特に劇中劇のヌード劇の場面のカメラワークや照明は怪し気でエロティックな魅力が光る。アニー・ジラルドの異様に腰振りダンス上手いし。照明演出で黒くして影のような姿にしたのはかっこよさも感じた(小並感)