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ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリーのeucalypsoのレビュー・感想・評価

2.0
西部劇のセオリーに習った雪山での列車強盗の辺りまでは、近作2本でほぼ出番のなかったスピーダー・バイクも絡み、パム・グリア似の黒人女性が仲間にいたりと、バディ感もそこそこあり悪くないのに、後が続かず。

ロン・ハワード監督は本作の70%を撮り直したらしいので、これ以降にメスを入れたのでは?と推測。冒頭、惑星コレリアの市場を逃げ回るコミカルな未公開シーンは悪くない出来で、本編に入れてもよかったのに。

ハン・ソロ役のオールデン・エアエンライクは、線が細くて生真面目。「俺はアウトローだし」と恋人に強がっても全然そうは見えず、「ケッセル・ランを12パーセクで飛んだぜ」とドヤっても周りに「はぁ?」とシラけられる。本来なら笑うところなのに笑えない。メタな意味で、彼のキメ台詞がハン・ソロというユニークなキャラクターを活かせてない証左になってしまってる。

ルーカスが新三部作でアナキン=ベイダーをイキがる青二才に設定したのと同じ轍を本作も踏んでいて、SW史上、最もソロとベイダーの青年期が、ショボいチンピラ風情にしか見えない。不二子ならぬキーラに振り回されるがまま、クライマックスのとある人物の殺人で、ルパン三世のような義賊にもなれず。なんか、どっちつかず。いや、チンピラでもいいんです、面白ければ。

実力俳優の魅力を引き出せないディズニーSWのセオリーは引き継がれ、ウディ・ハレルソンは支離滅裂な役回りで、エピソード1のリーアム・ニーソンのような師としてのカリスマ性は発現せず。それでも、本作で一番安心して見れる。

期待していたランド役のドナルド・グローヴァーもソロと同じく2枚目にも3枚目にも吹っ切れない立ち位置で、あまり見せ場がなくてガッカリ。彼が本作の直後にリリースしたMV「This Is America」のカッ飛んだ破天荒さは望むべくもなく。

キーラ役のエミリア・クラークはそこまで鮮烈な印象は残さないけど、ヒロインとして健闘していたと思う。

L3は、ドロイド奴隷解放を唱えるジャンヌ・ダルクばりの革命家にしてランドの恋人という謎設定で、例えが古すぎるけど外見は漫画「火の鳥」のロビタ、役柄は「コブラ」のレディを思わせなくもなく、「ローグ・ワン」のK-2SOに迫る勢い。ダイバーシティを闇雲に唱えるディズニーならでわの奇形キャラで最高。

チューバッカはどこまでもチューバッカまんまで、本作をSWユニバースに紐づける数少ないアイコン。彼を助けたことでソロは帝国軍から追われ命運を共にするという最強のバディなのに、存在感が薄い。

後半、誰かが誰かを裏切ることでしかスト
ーリーを引っ張れず、ソロがランドからミレニアム・ファルコンを巻き上げる重要なエピソードもサッと流して幕切れ。ラスボスのサプライズもとってつけた感しかなく、何より完結してないので、安いクライムTVドラマを観てる錯覚に陥り、モヨるしかない。

ロン・ハワードは、難題を振られてこなしてる感が強い。

散々ディスってるけど、エピソード4に顕著だった、悪漢はびこるピカレスクな世界観はそれなりに描けていたので、ソロ、チューイ、キーラ、ランド、L3の絡みを濃くしたSW版「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」として、フィル・ロード&クリス・ミラー監督で観たかったというのが本音。

「最後のジェダイ」に続き、オールド・ファンにはツラい映画。ディズニーはどこまでSWを骨抜きにして泥船?ドル船?に乗り続けるのか、残るは野次馬的興味のみ。
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