ケーティー

ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリーのケーティーのレビュー・感想・評価

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ジェダイを出さない意欲作だが、本編なしの壮大な予告編
ハン・ソロとチューイの出会いと友情の物語はいい


まず本作は明らかに続編ありきで制作されている。ハン・ソロとチューイの出会いの話などはよいが、メインのキーラとの物語や反乱軍絡みの話がこれからというところで終わっている。

スター・ウォーズシリーズの大前提として、正義のために戦う主人公という骨格があるが、本作はその骨格がない。ハン・ソロの生い立ちの説明としては、色んな要素を入れ込んでるが、本作のメインストーリーとなる資源を盗み届けるという筋立ては、その目的が曖昧なのだ。たしかに、キーラとの愛の話が絡むのだが、それも構成上はサイドストーリー扱いで、先に触れたように結末は先に持ち込ませる。お金と危険からの回避(依頼者に殺されること)という目的はあるが、その背景にハン・ソロなりの正義なり信念なりが関わってこないと話が盛り上がらない。例えば、同じ運び屋の話でも、映画「運び屋」には、主人公の老人は大切にしてきた農園と家族を取り戻したいという共感を呼ぶ目的があった。しかし、本作ではそれがないのである。キーラを助け再び一緒になるためという一面はあるのだが、そこも浅いのだ。例えば、好きな女性のために頑張るが実は女性は敵とつながってたというストーリーラインなら、参考にすべきは「銀河鉄道999」だが、そこにも母の死や人が生きるということは何かを学び1つの答えを見つけてメーテルを動かすという骨太なエンジンがあった。翻って、本作は本来は続編で見せるつもりだったのかもしれないが、そのエンジンが弱いのである。好きな女になぜこだわるのか、ハン・ソロにとって生きることは何なのか、そこをもう少し深掘りして設定をつくり、ストーリー構成と絡めることで、もっと話が骨太になったように思われる。そして、何よりも運びをやるというストーリーの骨格に共感を呼ぶ要素をもっと強めなければいけない。

また、そもそもスター・ウォーズは、すでに一度観た人ならジェダイの理念や反乱軍の理想に共感してるから、興味を持ってみるが、ジェダイを出さないからこそ、行動の目的をどう描くかが重要なのにそこができていないのである。

さらに、そもそもスター・ウォーズファンにとって、ジェダイや帝国軍に興味があるから観るわけであって、あの独特の戦い方、組織、人気キャラクターなどなどそこがないのは、かなりのデメリットで、その中で作品を作ることを決めた意欲はすごいが、結果的に骨抜きのスター・ウォーズになっている。

このように、作品の骨格には問題があるものの先に触れたように、ハン・ソロとチューイの出会いと友情が描かれており、そこは共感を呼ぶストーリーでいい。似た境遇にあった二人が出会い、ハン・ソロが機転を利かせて、敵だったチューイを仲間につけるというのも、ハン・ソロらしいストーリーでよく出来ているのだ。逆に、こうしたよい部分があるからこそ、続編ありきの1作目にしても、作品内での起承転結があり、単独の作品として鑑賞に堪えうるものが作られなかったことが惜しまれる。

終盤のダークサイドの登場やキーラのラストの行動など、その後が気になる伏線は多々あり、壮大な予告編としては成功しているのだから、ぜひ続きがみたい。