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ポバティー・インク あなたの寄付の不都合な真実のwigglingのレビュー・感想・評価

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「地獄への道は善意で舗装されている」の実例集のようなドキュメンタリー。間違った援助がどんな悲劇を生み出すのかを描いた良作です。

被爆地広島には毎年10tを超える折鶴が送られ、その焼却処分に年間1億円を費やしています。善意の形をしたゴミが世界中から送りつけられてるんですね。善かれと思ってやっている事なので悪し様に言うのも憚られる。
浅はかな善意ほどタチの悪いものはないと言いますが、広島の折り鶴はその身近な例ですね。本作で示されるのはもっと悪い例、その国の産業を破壊し貧困を助長してしまうような。

2010年に大きな地震の被害にあったハイチには、世界中から多くの支援が寄せられました。それは災害直後であれば有難かっただろうけど、3年経ってもアメリカから大量の米が送られてくる。市場に無料の米が溢れれば米農家が消滅します。その状態が長引けばその国では二度と米が作れなくなり、産業自体が消滅する。
副作用は他にもあって、米農家がなくなることで失業者が増加する、依存体質が高まり援助なしでは生きていけなくなる、その結果まるで支援国による植民地支配のような状態になってしまう。
ハイチでは、ベンチャーが立ち上げた太陽光パネル事業も同様に潰されてしまった例も紹介されています。

こういった事態に陥るのは、背景に「貧困産業」があることが指摘されます。いまや数十億ドル規模の巨大ビジネスになっているんですね。
これに加担しているのが、U2のボノやアンジェリーナ・ジョリーといったセレブたち。飢えてやせ細った子供の写真で「気の毒な人々を何とかしなければ」「彼らは無力で何もできない」というイメージを助長している。これも善意からくるものではあるんだけど。

ではどうすればいいのか。援助においては、自助努力を潰してはならないということを大前提に活動すること。施すのではなく、自活できるよう手伝ってあげること。その成功例も紹介されています。

他人に何かをしてあげるのは快感でもあるんですよね。これが善意の落とし穴であり、その事に無自覚でいるとそれが人を傷つける場合があることを忘ないようにしたいものですね。
自分も野良猫を見ると餌をあげたくなるタイプの人なので、ホント要注意です。
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