天馬トビオ

アルジェの戦いの天馬トビオのレビュー・感想・評価

アルジェの戦い(1966年製作の映画)
3.5
「自由とは戦い取るもので、座して与えられるものじゃないということだ。そして、戦い取った自由にだけ、価値があるということだ」(平井和正『狼のレクイエム』)

他国を植民地化して支配したことはあるけれど、自国を他国に占領され支配されたことのない日本人(太平洋戦争敗戦後の「占領軍支配」は厳密な意味で「支配」ではないと思う)には、この映画で描かれているような自由・独立のための闘いはしょせん他人事、永遠に理解できないのだろうか。

この映画の主人公は「市民」。彼らはある人にとっては「レジスタント」であり、別の立場の人にとっては「テロリスト」だ。その暴力行為を英雄的行為と称賛するか、テロ行為と非難するかは、それを判断する第三者の立場の違いにすぎない。独立が成功したときには救国の英雄、支配が続く場合は残虐な人殺し。歴史は非情に、両者を同じコインの裏表に刻み込んでいる。

モノクロ画面に緊迫感あふれるリアリズム重視で描かれる市民の闘争。それは個人あるいはチームプレーの自由と独立のための闘争。戦略的成功もあれば、一人一人にとっての悲劇的な展開も見せる。その果てに待っていたラストの集団示威行為の圧倒的熱量に体が震えるほど感動する。

「権力にたいする人間の闘いとは忘却にたいする記憶のたたかいにほかならない」(ミラン・クンデラ『笑いと忘却の書』)
天馬トビオ

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