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アルジェの戦いのgenarowlandsのレビュー・感想・評価

アルジェの戦い(1966年製作の映画)
4.8
ついに観ました名作。凄いものを観てしまったという感想しか書けません。カミュ関連の作品でアルジェリア独立戦争が気になって観たのですが、映画とは思えない、ニュース映像、ドキュメンタリー作品に見えます。

首都アルジェで独立運動の民族解放戦線(FLN)のゲリラ組織のテロと、フランス空挺部隊の制圧が、都市部で繰り広げた1954~1960年のアルジェの戦いを描いています。

その後1962年にアルジェリアはフランスから独立。まだ記憶に新しいその3年後にこの作品は公開されました。フランスでは5年間上映が禁止されます。


この映画の感動は事実を列挙した方が私の拙い感想文より伝わると思うので、
以下に、wikipedia(英語版の方が数倍詳細)からの要約等を記します。


空挺隊のマチュー大佐と一部の無名の俳優以外は、数千人の市民エキストラが参加しています。FLNの実際の幹部が幹部役として参加。一人は原作者です。

マチュー大佐役のマルタンは役の上ではフランス軍ですが、アルジェリア戦争に反対署名したことで劇場を解雇されていた人物。レジスタンス活動に参加し、インドシナでは落下傘部隊に所属した退役軍人でした。そのためか、冷徹な大佐がFLNの司令塔へのリスペクトを表すシーンがあります。このシーンよかったです。

原作は捕虜となったFLN幹部の手記で、フランス軍による非合法な拷問、無差別殺人、脅迫等の残忍さが描かれています。

フランス側には融合策はなく、支配、被支配の関係で対立を深めていきます。

ゲリラ側は、テロ行為を継続するつもりはなく、国連、世界の注目を集めるための一手段で、市民からの支持・協力を得て、次に進むために司令塔は戦略を持っていました。

ニュース映像が差し込まれているように見えますが全て映画です。この撮影のライブ感で、カスバの街を埋め尽くす市民の数に圧倒されます。フランス軍による石造りの住居の爆破、テロリストによるヨーロッパ人地区の爆破、大量な爆破が連続して行われます。

実際に、この映画は通常の戦争と違って市街地戦で、都市ゲリラ戦やテロの戦術を、脱植民地化時代に台頭した武力闘争の解放組織が模倣したと言われています。

また、アメリカのペンタゴンは9.11の数年後、イラク問題に直面していた時に、フランスの失敗を学ぶために、この映画の上映会を開いています。
そのチラシには「テロとの戦いに勝ち、思想の戦いで負けるには」「戦術では成功し、戦略では失敗」と書かれてありました。

アラブ人がフランス軍を非難する時に出すヒュルヒュルした甲高い声、それが街中の市民に広がっていく様子は、アラブ人の怒りの炎がアルジェリア全土に燃え移っていくようでした。アルジェの戦いの後、2年間沈黙していたアラブ人市民が全土で蜂起し、独立につながります。

ジッロ・ポンテコルヴォ監督はイタリア出身ですが反ユダヤ主義台頭のためフランスへ移り映画を学び制作、再び祖国イタリアに戻りレジスタンスのリーダーとして活動。戦後、ソ連に失望し共産党離党し、映画制作に活動の基軸を置きました。
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