歯医者のお姉さん

アルジェの戦いの歯医者のお姉さんのレビュー・感想・評価

アルジェの戦い(1966年製作の映画)
3.8
まず、演技ということを忘れてしまうくらい、スクリーンの端から端まで出てくる全てのキャラクターに命が宿っていて、臨場感に呑み込まれそう。耳に残る雄叫び声。静かに涙を流す瞳の奥底の燃えたぎる炎。特に両者のトップ、ベンムヒディの言葉に一々心打たれるし、マチュー中佐の佇まいにも好感が持てた。皆が付いていく理由は一目瞭然だった。どちらかに傾倒しすぎず、人間味も残酷面も、客観的にありのままを写していたところが印象的。直接的な暴力だけでなく、アラブ人=テロリストと結びつけてしまう暴力的な思考、マスコミによる言葉や好奇の目という暴力、暴力、暴力、暴力の連鎖。暴力からは何も生まれないという教訓と、そこで懸命に生きた人々の命の記録。とても見応えがあった。