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アルジェの戦いのarchのレビュー・感想・評価

アルジェの戦い(1966年製作の映画)
5.0
大傑作。1950年後期から始まったアルジェリアの独立運動をアラブ系アルジェリア人(革命側)の視点から語る作品になっており、彼らの勇姿の破滅が描かれている。
まず真に迫るドキュメンタリックな映像に驚かされる。基本的にはフィクションだと分かるような映像の連なりになっているのだが、その画面内にはある人物たちや出来事は実録の映像(ニュース映画的な)を挿入したかのような真実味を帯びている。調べてみるとそういった当時の映像を利用したという話はなく、全て映画用に撮影したものだという。役者は全て演技度外視で実在の人物に似た人を起用してあるそうだ。
あの爆破も群衆も拷問も、あの生々しい熱気な全て意図された映像であるというのが凄い。

そういった真に迫る映像によって、歴史は再現される。アルジェリアの独立という結末に向かっていく話ではあるため、またアラブ系のアリを主人公にしている為、フランスとの対立構造は善悪に置き換えられそうだ。ただアルジェリア側の警官への暗殺行為、特に子供が兵器としては利用されている様子は見るに耐えなく、その二項対立の関係を素直に飲み込めるものにはなっていない。彼らのほぼ無防備の警官への殺しが軍の介入を起こし、結果的にFLNの壊滅を招く。

ただその壊滅した58年の2年後、60年に群衆は再びクーデターを起こす。それを機に62年にようやくアルジェリアは独立する。その背景に何があったのかは語られないが、この結末はアルジェリア人の多くの犠牲が婉曲な形で貢献したのだという見せ方になっている。

ドキュメンタリックと言いながらも、実は軍部の動きが結構面白かったりもして、実に見応えのある作品になっていた。

ちなみに劇伴を担当したのは、エンニオ・モリコーネ。本来劇伴がいらない作品(ドキュメンタリックな為)ではあると思うのだが、彼のメロディが完璧なタイミングで流れるため、話と馴染み、フィクション性を薄めていたように感じた。凄い
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