土屋ノリオ

アルジェの戦いの土屋ノリオのレビュー・感想・評価

アルジェの戦い(1966年製作の映画)
4.0
今から50年前、日本を代表する映画雑誌『キネマ旬報』が毎年発表する外国映画年間ベスト・テンにおいて、圧倒的な差で第1位の栄冠を勝ちとった本作。子供の頃に鑑賞していたのだが、まったく良さが分からず、内容も理解できていなかったので、デジタルリマスター版が全国で順次上映されているのを知って劇場に足を運んだ。アルジェリアがフランスから独立する為に戦った抵抗運動を、ドキュメンタリータッチのモノクローム映像で描いているのだが、警官を暗殺するシーンなども寒気すら感じさせる怖さ。爆弾をしかける女性が、周りを見渡し子供がいるのを見て、躊躇してしまう細かい葛藤などの演出も素晴らしい。抵抗運動の組織の作り方も実際にあったのではと思わせる程のリアリティで、警察側の拷問の醜悪さは、素直に映画を楽しむというレベルを超えている。マカロニウェスタン音楽で有名な「エンニオモリコーネ」の旋律がストーリーを盛り上げ、本来はヒーローのいない革命映画であるのだが、9・11以後の現在では、この作品のリアリティはテロ活動映画に感じてしまったのも事実。体制と反体制の両面から描いてはいるのだが、現代のテロ後の状況を知っている自分にとっては、見ていられないシーンも多く、当時の日本での高評価は、学生運動などに影響を受けた方の多くが、評論家にいたのではないかと感じずにはいられない。

ドキュメンタリー?

フィクション?

その境目がないほどのリアリティとストーリー展開の面白さに圧倒されてしまう作品で、映画としては評価できるが、「好きな作品」ではない。
土屋ノリオ

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