おさるのじょじへい

ガザの美容室のおさるのじょじへいのレビュー・感想・評価

ガザの美容室(2015年製作の映画)
3.6
人は真の悩みから目を逸らすために、些細な悩みを持ち出して、悩みをすり替えるのだと聞いたことがあります。しかし真の悩みを解決しなければ、結局、心のモヤモヤが晴れることはない。(胸がいたい…。)

戦争への不安、生活苦、芳しくない夫婦関係、女性蔑視…。彼女たちが抱える悩みが解消されることはとても難しく、空虚な気持ちを埋めるために、髪や肌を整え、メイクをするのでしょう。
ガザのことをよく知らないまま今作を見てしまい、当初は皮肉に満ちた群像劇との印象しか残らなかったのですが、ガザの状況を知ってから見直したら、彼女たちの苛立ちと苦しみが、みるみるうちに伝わってきました。
平和な国で暮らす自分なら、たった1発の銃声を聞いただけで、狼狽えて正気を失うでしょう…。

過酷な状況が続くガザから、これほど完成度の高い映画を製作できたこと、センスのある監督が輩出されたことに驚きました。アスリート然り、文化人然り、苦難こそが人の才能を高めるのかもしれません。