ヨッシー

アリータ:バトル・エンジェルのヨッシーのレビュー・感想・評価

3.0
『日本漫画の実写化はハリウッドでもこうなるのか...』

『ビジネスジャンプ』で連載されていた人気漫画をハリウッドで実写映画化。

ガラクタの中から拾われたサイボーグの少女・アリータは失った自分の記憶を探す戦いに身を投じていく。

監督は『スパイキッズ』などのロバート・ロドリゲス。
主演は『メイズ・ランナー』シリーズなどのローサ・サラザール。

3D吹き替え版で鑑賞。

今後『名探偵ピカチュウ』『進撃の巨人』『君の名は。』など、日本原作の作品が続々とハリウッド実写化されるが、正直なところ日本の漫画やアニメの実写化は日本国内ですらいまくいってるのが少ないのに、海外だともっと酷いイメージがある(『ドラゴンボール』『デスノート」など)。うまくいったのは『オール・ユー・ニード・イズ・キル』ぐらいじゃない?

なので、その成功の先駆けとなって欲しい1本なのだが、結論から言ってしまうと、微妙。

もちろん、良いところはある。
映像技術はさすがはハリウッドといった感じで文句なし。
世界観の作り込みがしっかりしているし、CGも良くできてる。

主演のローサ・サラザール演じるアリータも体の作り込みは見事だし、彼女の演技も良くサイボーグの体でもしっかりと生き物と感じ取れる。

ただ、脚本に関しては正直不満が多い。
邦画の実写化だと、原作の複数のエピソードを全部詰め込んだはいいけど、細かいところを全然調節できていないせいで、ところどころが矛盾してたり、焦点がブレてたりすることが多い。
今回の『アリータ:バトル・エンジェル』もまさにそれで、原作全9巻の内前半部を映画化してるけど、上手くまとめられたとは思えない。

本作には、アリータの失われた記憶を探す、ヒューゴとの恋、イドとの擬似親子関係、ザレムを目指す、などのエピソードが詰め込まれているが、どうも場面場面で目的がコロコロ変わっていて、物語の焦点がブレブレになっている印象が強い。

原作の名場面を再現したかったのは分かるけど、その場面を雑に詰め込んだだけで、物語上で機能してないシーンも多い。
例えば、ハンターキラーの酒場のシーンは仲間を探しにきたはずなのに、結果誰も仲間になっておらず、ザパンから恨みを買う程度の役割しかない。ここで出てきたサイボーグ犬使いのキャラが仲間になるかと思ったけど、その後一切出番はない。
中盤の見せ場であるモーターボールもアクションは確かに見所なんだけど、アリータが試合中に飛び出してそのまま終わっちゃうからとりあえずアクションをしただけで、物語上は意味があまりない。

ヒューゴやイドとの関係に関しても描きこみが明らかに足りないから全体的に薄くなってしまっている。そのせいで急に心変わりしたように見えるところもしばしばある。

映像的には良くできた世界だけど、世界観の説明の手際は上手いとは言えない。
やたらとセリフによる説明が多く、肝心なところは説明不足になっているところが多い。

アクションシーンは悪くはないんだけど、せっかく中盤以降にーはアリータが新しい体を手に入れてるんだから、それをもっとガジェットとして面白く見せて欲しい。
正直前の体との違いがよく分からず、特別な機能も特に見せてくれない(アイアンマンみたいなナノマシンも特に活かせていない)。
例えば、以前の体では脆くてやられてしまった攻撃を新しい体なら平気だったとか。
指から火が出る機能も見せてたんだからどこかでそれ使おうよ。

それに、アリータが強すぎて敵が全然強敵に見えない。一応本作のボス的なキャラクターであるグリュシカも見た目はゴツくて強そうなのに全然強敵感がない。クライマックスの2人の対決もかなりあっさりでつまらない。

ストーリーも結局は続編の為に中途半端な感じで終わってしまう。
今回の話だけ見ればアリータは特に何も出来ずに恋人を失っただけの敗北の話にしか見えない。
続編を作るにしてもせめて1作目はしっかり1本の映画として起承転結を持たせて欲しい。最近は『鋼の錬金術師』や『BLEACH』の実写版もやってたけど、そんなのと同じ事してどうすんだよ?

せっかくハリウッドの最新技術での豪華な映像なのに、脚本が完全に足を引っ張ってしまっている。
明らかに話に詰め込みすぎで焦点がブレて、全体的に薄い。
せめてもうちょっと焦点を絞ってしっかりと芯のあるストーリーにしていればもっと良くなったと思う。
もし続編をやるならもう少し脚本に力を入れて欲しい。
ヨッシー

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