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メイズ・ランナー:最期の迷宮のnoteのネタバレレビュー・内容・結末

3.3

このレビューはネタバレを含みます

秘密組織WCKDに捕らわれたミンホを奪還すべく、彼が乗った列車を襲撃するも失敗に終わったトーマスたち。やがてラスト・シティと呼ばれる隔離地域に運ばれたミンホは、WCKDに寝返ったテレサによって強力なウイルスの抗体開発のため実験台にされそうになるが…。

ティーン向け小説を映画化したサスペンス・アクション「メイズ・ランナー」のシリーズ第3弾で最終章。

1作目は、謎の組織WCKDによって迷宮に監禁された若者たちの脱出サスペンス、2作目は若者たちが解放された外の世界は人間が凶暴化するウイルスに侵されたディストピアで、生き延びるために奮闘するゾンビ映画のスリル。

3作目は予想通り戦争映画だ。
囚われた仲間のミンホを奪還するため、またWCKDの蛮行を止めるため、本部へ乗り込むのは目に見えている。
人権を無視する組織を倒し、方針を変えさせて共存を図るしかない。

冒頭から「ワイルドスピード」か「マッドマックス」な感じで、ミンホの乗る護送列車を主人公トーマスたちが車で追う白熱したチェイス。
オープニングの掴みとしてはバッチリだ。
早くも救助成功か?と思わせて、失敗。
そうでなくては話が続かない。
救助目的でアクションの連発が期待されたが、クレーンで若者たちの乗るバスを釣り上げての救助、逃走の末に高層ビルから地階のプールに飛び込むなど、要所で若者たちの健闘が見られるものの、それほど派手なアクションが無いのが、予算の都合なのか?残念である。

3作目はほぼ予定調和だ。
基本的に広げた風呂敷を閉じる作業に終始していて、驚きは少ない。
前半は敵の本拠地への侵入。
中盤はウイルスの免疫を持つミンホや、他に囚われた若者たちの救助。
終盤はWCKDとの戦いである。

意外だったのは終盤の戦闘である。
「WCKDを倒す」のは目に見えていたが、それをするのは主人公以下の若者たちではなく、大人たち。
高い壁に囲まれ、豊かで文明的な生活を営むWCKDのラスト・シティを、壁の外で見放されていたウイルス感染者の大人たちが急襲する。
絵面としては「進撃の巨人」だが、描かれるのは富裕層と貧困層の闘争である。

大人たちは感染者を救うかもしれない若者たちのことなど全く考慮せず、しかも富裕層を懲らしめる訳でもなく、貧しいからといって略奪する訳でもなく、壁を爆破した後に闇雲に雪崩れ込み、ただひたすらに破壊の限りを尽くす。
そこに長い差別と偏見によって練り上げられた怨恨という戦争の原理がある。

製作年からいって、高い壁がメキシコ国境に作られたトランプ大統領の国境警備策への不満か?
それともイスラエルの嘆きの壁を破るイスラム教徒か?
子どもたちの未来など考えぬ、醜い大人の姿が戦争を物語る。

主人公トーマスはウイルスを唯一破壊できる免疫を持つのが判明したというのに、仲間と共に戦闘に巻き込まれる。
ミンホは助けたものの、メインキャラクターのニュートとテレサが犠牲になる。

テレサ亡き後、誰が抗体を作るというのか?
前途ある若者たちの未来と命が奪われるのは反戦のメッセージであり、大人の鑑賞にも耐える。

彼らの死を乗り越えて、安住の地にたどり着き、コミュニティを築く主人公たちだが、結局は共存など出来ぬ格差社会を暴いただけ。
ウイルスに満ちた世界も解決を見ず、平和が訪れたとはいえない。
しかし、それが現実と虚しくもリンクする終わり方が良い。

広げた伏線を拾いきれていないし、突っ込みどころも多い。
ストーリーは既視感が強く、平凡ではあるのだが、3部作を通して「世界は醜い」「大人たちは汚い」と謳いあげ、今どき珍しい純粋な若者たちを描いたことが青春映画の余韻を残す。
そこがどうにも嫌いになれないのである。
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