アラサーちゃん

メリー・ポピンズ リターンズのアラサーちゃんのレビュー・感想・評価

4.0
とてもよかったです好きでした。
前作が大好きなので、その世界観が壊れちゃうんじゃないかと危惧する部分もあったんですが、ぜんぜんそんなことなかったです。

半世紀前の作品ですが、オリジナル本来の良さと現代の技術をうまく融合させた作品だなあと。あれ以上オリジナルを尊重しすぎても、こちらが初見のひとには受け入れがたいだろうし、オリジナルをないがしろにした単なる映像技術大作に偏られても「メリーポピンズ」ファンは困惑する。
それがちょうど見事にいいバランスで描かれているなあと感じました。


確かにオリジナル版と真っ向から比較すると面白くないけれど、世界観を引き継いだ別物と捉えれば最高にエンターテイメント。

完全なるリメイクではなく、当時子どもだった主人公が大人になっている、続編というか後日譚みたいなものなので、そこがいい。
(たとえばジャック・ドゥミも「ロシュフォールの恋人たち」「シェルブールの雨傘」「ローラ」等作品のなかで、世間話として互いの作品について言及している場面があるところが好き)

作品間のリンクは、虚像でしかない作品を現実的なものに変えてくれて、その世界観をより深めてくれるからとても好き。


とくに好きなくだりは、絵のなかに入り込むくだり。初期ディズニーらしい平面絵で、細かい動きもキャラクター像もまさに昔のディズニーそのまんまって感じなのがかわいいです。
とくに舞台に上がる小動物さんがね。かわいい。手で払いのけたら飛んでっちゃうようなシーンとか、とてもかわいい。

オオカミの目が血走ってぐるぐるしてるのとか懐中時計の影を悪のマクガフィンとして映し出すシーンの気味悪さとか。ディズニーってかんじ!


オリジナル版好きとしては、ジュリー・アンドリュースのメリー・ポピンズがメリー・ポピンズすぎたので、そこにエミリー・ブラントという配役に一抹の不安をおぼえたのですが、その点まったく心配ご無用でした。
びっくりするくらい気にならなかったな。わたしのうっかりで吹き替えだったから歌とかはわかんなかったんですけど、美人で所作も綺麗で絵になりますよね。

個人的に嬉しかったのは、前作でメイクを施してドース・シニアを演じていたディック・ヴァン・ダイクが、齢を重ねたドース・ジュニアを演じてくれたこと(さらに華麗なステップでダンスまで披露してくれたこと!)
ラストで風船おばさんをアンジェラ・ランズベリーが演じていたこと。この風船おばさん、オリジナル版でいう鳩の餌売りおばあちゃん的な感じなのかな~

あとは、大人になったマイケル・バンクスを我らがウィショさんが演じていて、なんか「あ~次男坊っぽい~」「あ~まさにマイケルって感じ~」(←なにが?)と思いながら観てました。情けなさそうなへの字眉とかマイケルって感じしません?


唯一、気になると言えば、なぜジャックとジェーンの恋模様が必要だったのか?ってことと、さすがにラストの風船はやりすぎたかなってことと、まあメリー・ポピンズの設定に投げ掛けられらる疑問ではあるけど「あれだけありえないことができるならそもそも・・・」っていう解決案を提示したら物語は破綻しちゃいますよね黙ります。


オープニング、わたしオリジナル版がとても好きだからなんでこんなオープニングなの?と正直がっかりしたんですが、なるほど、この物語のマクガフィンが「火(灯り)」なんですね。
それならラストも桜じゃなくて火で締めればよかったのに・・・とちらっと思ったりもしたけど。


でも冒頭のしっちゃかめっちゃかトラブルのなかで行き交う英国ジョークのセンスと間合いがやっぱり好きですね。とくにエレン。あのコメディリリーフ、もっと後半たくさん使ってほしかったのに残念だなあ。
(誰だっけ、とすごく気になって調べたら「リトルダンサー」の先生じゃん!)

チャイムが鳴ってドアを開けて、「修理屋じゃないわね」と持っていたモップをなぜか押し付けてドアを閉める。またチャイムが鳴ってドアを開けたら、「うちのモップ持って何やってんの?」ああいうコントをもっとやってほしかったな。
とくにエレンの登場シーンで好きだったのは、遅刻したマイケルが慌てて家を出ていったあと、マイケルが鞄を忘れたことに気づいて家から飛び出して一言。

「ネジで留めておかないと、頭まで忘れていくんじゃないかしら」


できれば観る前に予習したかったんだけど、すっかり忘れていたのでそこだけが悔やまれます。曲はやっぱりオリジナル版のほうが最高ですね。