たてぃ

手紙は憶えているのたてぃのレビュー・感想・評価

手紙は憶えている(2015年製作の映画)
4.5
ナチス関連の作品で製作国にドイツが加わるだけでクオリティがグッと高まるのを痛感した良作でした。

認知症の主人公がアウシュビッツで共に生き残った友人から手紙を渡され、そこには主人公と彼の家族を殺したナチス親衛隊SSの隊員が名前を変えてまだ北米で生きており、その候補が4人いることが書かれている。“手紙”を渡された主人公はその4人の誰が家族を殺したのかを探す旅に出るサスペンスモノ。

冒頭でクオリティが高まったと申しあげましたが、製作国がカナダ単独だったらそこまでするかな?と思ったちょっとした演出が加えられていて…
・ナチスといっても国防軍の人達は国のために戦っていたことを伝えている。ホロコーストをした親衛隊SSとは全く別。
・アウシュビッツへ送られたのは、ユダヤ人だけでなく、ドイツ人の同性愛者もいたことをしっかりと伝えているところ
・移動中の車窓に出て来た茶色の貨物列車の車両。それはアウシュビッツへ輸送された時のことを思い出させる
・番犬が吠えまくり、空襲警報のような騒音。アウシュビッツにいた時のことを思い出させる
・ナチス信奉者の部屋にホロコーストを指揮したSS隊長のハインリヒ・ヒムラーの写真が飾られていたところ(ユダヤ人にとっては絶対に見たくない顔)
・ピアノから流れてきたのはワーグナーの曲。彼の楽曲はナチスの党大会で使われていたため、現代のユダヤ人の中で彼の楽曲はタブーとされている

それと、現代のナチス信奉者(いわゆるネオナチ)をしっかり「頭の悪そうな奴」として描いているシーンもあって、ドイツ側の意図なのか、監督の意図なのかわかりませんが、そういうところもGood jobですね。

「ヒトラー最期の12日間」のブルーノ・ガンツさんや「U・ボート」のユルゲン・プロホノフさんといったドイツ映画でお馴染みの俳優さんも出て来たことも含めて本当に良い作品でした。

《蛇足》
アウシュビッツでの残酷さを知ることが出来る資料館が日本にもあることを最近知りました。東京からですと、東北の玄関口の福島県白河市にあるのでいつかは行こうかと思ってます。

アウシュヴィッツ平和博物館
http://www.am-j.or.jp/index2.htm
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