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溶けるのtetsuのレビュー・感想・評価

溶ける(2015年製作の映画)
3.5
青山シアターの配信サービス終了(6/28まで)に合わせて、鑑賞。

真夏の田舎町。
「制服を着たまま、水に飛び込む」行為によって、わずらわしい現実から解放感を味わう女子高生・真子。
周りで起こり始める様々な問題に、少しずつ募る苛立ち。
感情を抑えきれなくなった真子は、とある行動に出る……。

田舎町での生活に不満を抱える主人公と、とある人物がやってくることで起き始める様々な変化。

おおよそのあらすじは、監督と同じく『21世紀の女の子』に参加していた女性監督・加藤綾佳さんのデビュー作『水槽』と、かなり似ていた。

どちらも監督自身が脚本を手掛けていて、それぞれが学生時代に体験したことを反映している印象。

そのため、彼女たちの創作意欲の原点には、閉塞的な田舎の生活の中で感じる「煮えきらない苛立ち」が共通していることが分かった。

また、異性に対する怒りや、落ち着いた土地柄ゆえに感じる日々の物足りなさ、
大人へと移り変わる少女の心の揺れ動きは、どこか山戸結希監督の『溺れるナイフ』にも通じているのかもしれない。

賛否両論はありつつも、これらの物語に心を動かされる人がいるのは、「フィクション」でありながらも、過去の経験に基づいた「真実」があるからだと思っている。

彼女たちにしか書くことの出来ない世界観は、たとえ万人に評価されることがなくても、一人の観客を救うことが出来れば、大きな価値や意味があるのではないか。

そんなことを感じさせられる作品だった。
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