継

魂を救え!の継のレビュー・感想・評価

魂を救え!(1992年製作の映画)
4.0
パリへ向かうTGV(高速鉄道)で税関検査に引っ掛かったマチアス。一時は身柄を拘束されるも無事に解放、だがパリに着いた彼は拘束中に没収されていた自身のスーツケースに、ミイラ化した人間の頭部を見つけて...。

冷戦時代の政治サスペンスに巻き込まれた主人公。
外交官の息子という周到な設定や、初めの舞台がベルリンではなく旧西ドイツの首都ボンという事、更にヤルタ会談の裏話で始まる幕開けがル・カレの書くスパイ小説のようで奮っている。

140分の長尺を幾つかに章立てして進むストーリーは、法医学研修生としての知識を武器にミステリーの解明に全集中でww挑みながら、その一方で如何にもフランス映画らしいと言うか、25歳の青年としての日常〜恋愛模様という, この監督が今作の後に軸に据えていくテーマにも同等に近い時間を割いて二律背反するマチアスの苦悩を描いていきます。

歴史サスペンス+法医学スリラー+青春ラブロマンス。
ライアン・ジョンソンに『ブリック/消された暗号』という学園モノ+ノワールな映画があって“あんなカンジかな((o(´∀`)o))?”と思いきや、当たり前だけど全然違うテイスト。

死者の尊厳、その上に成り立つ現代を生きる者の日常ー。
原題『la sentinelle』は歩哨の意。外交駆け引きの末, あまりに曖昧に線引きされた目に見えぬ国境線をめぐるドラマ。
現代の人間関係に歴史が干渉し引き裂くさまをマチアスとその友人達を介して描き、過去が, 戦争が, 終わらずに地続きで現代に影を落とす構図を浮かび上がらせる。

友人と故意にバスを乗り過ごして街中を走って戻るシーンの導入とか,
人間関係に徐々に亀裂が生じていく過程…。
ディテールまできっちり描かれる人物の心理・相関, ストーリーの動線・支流の捌き方にソツがなくて, これが処女長編とはちょっと思えないくらいに観応えがありました。

室内にしろロケにしろ、全体に光度を抑えた映像。
色相もモノクロとは言わないけれど寒色系でまとめられた薄暗い印象。統一感を感じた一因は恐らくこの映像によるものだけど、邦題とは裏腹に思いを胸に秘めて静かに使命感に燃えるタイプのマチアスは恋愛にも生真面目で仲間内でも良いヤツだけどちょっと暗い田舎者なキャラ。映画は当然マチアスを主眼に映すので、自ずとそのキャラに染まって余計に薄暗い印象が際立ちます。
軽妙な会話のオシャレでロマンチックなフランス映画とはそういう意味で一線を画すると思うので、好き嫌いは分かれる映画ですョ(+_+)と、一応予防線を張っておきます(笑)。
継