魂を救え!
見知らぬ男の頭部に魅了され法医解剖に打ち込むマチアスの姿は鎮魂のように思えた。親類からも、自分の身体からも切り離された孤独な存在に、パリの街に馴染めない自分を重ねたのかもしれない。
そう書くと大分と狂ってる話だけど、あざとさは感じない。おそらく別の形で同じような共感を経験してるからなんだろう。
デプレシャンの映画は3時間前後の長いものが多い。もっと短くできるとの批判もあるそうだ。でも、個人的にはその回り道が魅力なんだと考えてる。ジャズがテーマだけで終わったらなんの味もないのと一緒で“余計”とされる回り道に親しみが湧く。
映画は、英露の外交官たちが終戦時の東西分断について語るところからはじまる。たった数人の男たちが世界を2つにわけた。舞台となるのはソ連が解体した1991年。主人公は両陣営の間に挟まれながら個人的な冒険をはじめるんだけど、死者と生者、男と女、いくつもの境界線が物語を重厚にしてる。冷
原題は『歩哨』。見張り役。マチアスは何から何を守りたかったのか。はっきりとした答えは出ないけど、その疑問を抱えるのが心地良い。