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『ホステージ・オブ・エネミーライン』に投稿された感想・評価

真っ黒こげ太郎の感想・評価

2022/11/27 16:11

4.0

革命と銃弾の狭間で　垣間見た戦場の真実――――

ミラグロッサ(奇跡の聖母)の国に　平和は訪れるのか――――

政府軍とゲリラ軍の革命戦争が続く1999年のコロンビア。

金持ち息子の青年、エドワルド・マルティネスは友人のフリオと共に車で休暇に出かけるが、道中で出くわしたゲリラ軍に友人もろとも捕まってしまう。

銃撃が飛び交う中でフリオが流れ弾で死ぬ中で、ゲリラ軍に拘束され連れ回されるエドワルド。
彼は人質として過酷な日々を過ごしながらも、ゲリラ側の真意や戦場の真実を垣間見るのだった…。

上流階級の青年がゲリラ軍の人質となり、地獄の戦場を体験する、コロンビア産の戦争ドラマ。

もはや言うまでもないが、ジャケットが思いっきり「エネミー・ライン2」を丸パクリした便乗ジャケットだ！！！！ｗ
しかも「激戦コロンビア！」の煽り文句で3作目にも便乗する気満々！！！
ここまで来ると清々しいな。ｗ
(当然「エネミー・ライン」シリーズとは全く関係ございません。ｗ)

そんな本作だが、ジャケから連想される様な人質救出映画ではありません。
戦闘シーンはあるが、アクションメインの映画ではない。
(クライマックスの戦闘シーンはそれなりに迫力はあるが。)

今作はゲリラ軍に誘拐された青年を主軸に、彼とゲリラ軍の人々との交流や人間模様を描いている。

本作の主人公はお金持ちのボンボン青年で、飲酒運転をもみ消したり捕まっても「僕は金持ちの息子だぞ！」と言い張る、教典的なボンクラお坊ちゃま。
しかし、ゲリラ軍の人々に連れ回され、彼らの生活や人間模様を見ていく内に彼らに対する意識や接し方が変わってゆく。
悲しい過去を持つ女性ゲリラに心惹かれ、家族を持つ若いゲリラ隊長とお互いの想いを語り合う。
色々あって音楽を引き語りすることになったり、サッカーで競って言い争いに決着を付けたり、相手が殺せるチャンスが巡ってきても相手を助ける。

しかし、人質へある以上平穏に終わる筈がなく、終盤は人質としての過酷な運命が待ち受け、最後は戦争によってすべてが引き裂かれてゆく。

ドラマ展開自体はありきたりで静かな内容ではあるが、テンポは良いし物語の語り口も上手いので以外にも飽きずに最後まで見れた。
何時殺されるかもおかしくない軟禁生活の緊張感や、中盤交流を得てからの緩み、からの上げて落とす展開等、急行もしっかりしている。

映画自体は恐らく低予算かもしれないが、土臭い泥にまみれた戦場の雰囲気はしっかり出てるし、出てくるキャラクターも個性がしっかりしてて分かりやすい。
私的には妻子持ちの若いゲリラ隊長が良いキャラしてました。
(ゲリラのリーダーも冷血漢っぷりが伝わって良かった)

その一方で、本作はコロンビアの内戦問題に対して焦点を当てているが、そこら辺に関しては薄味でクライマックスで取ってつけたかのように語られる程度。
ゲリラ側の人間事情を描いてるとは言え、そこら辺が不明瞭だったのでもう少しそこら辺を掘り下げても良かったと思う。

まぁ、主人公は親が金持ちだった為に愉快された若者なので、彼の帰結だけを描いたからそこまで書けなかったのかもしれないが。

ジャケから連想するアクションシーンは少ししかないし、シリアスな内容でハードな場面も多いので気楽に楽しむには向かない。
社会問題を描く場面も少ないのでそういうのを期待してる人にも物足りないとは思うが、それでも戦争ドラマとしては見ごたえがあった。

如何にもなパチモンジャケに囚われることなく見て欲しい佳作。