高橋早苗

シーモアさんと、大人のための人生入門の高橋早苗のレビュー・感想・評価

4.4
予告編を観て、気になった
菩薩と見間違うような
その笑顔

それ以上も以下もない
その瞬間だけに響く言葉、その声
そして
ピアノの音。

まるっきり、初めて
そう、初めて聴いた音だった。



監督はイーサン・ホーク
出演作「6才のボクが、大人になるまで。」で観た、風来坊ちっくなパパ役を覚えている
悩める彼が、一目でシーモアさんに心ゆるしたのも、シーモアさんの笑顔と物腰を見ていると、至極当然に思えるわ。




ピアニストとしての順調なキャリアを50代で終わりにし
それからは教えることに費やしてきた人
60年近く、ずっと同じアパートメントに住み

「私は孤独を糧にしている」

と言い切る、89歳のピアノ教師。



わたしはこれだ、と選んで
他を切り捨ててきた人の言葉は、強い。
しなやかさを含んだ強さと言えばいいかな。



ハタから見れば順調と捉えられるのだろう、いわゆる「キャリア」というものに
愛を見いだせなかったのかな。

彼の目には、己の演奏家として進む道が、ひどくバランスを欠いたものに観えたのかな。そう感じた。



彼が、ピアノを教えながら語る言葉

『音楽の教師が生徒にできる最善のことは、生徒を鼓舞し 感情的な反応を引き出させること』

彼自身が
『…音楽のためばかりではない』と話す通りに
感情的な反応を引き出させること、
言い換えれば



感情的な反応を
隠さず、偽らず
そのままに出していくこと



…って、次のステップへ行くためには
とても大事なことなのだ。ということ



彼は音楽家だから『音楽の教師が』と言ったけど
誰に何を教わるのでも同じ。



そして、教える人は
必ず持っている
ひとりきりの時間。
健全な孤独。
…だからこの映画に反応したのね。私は(´∀`)



教わる人も、教える人も
シーモアさんの笑顔が、言葉が、ピアノの音が
少しでも気になるなら。
この映画は、最高のプレゼントになるはず♪
高橋早苗

高橋早苗