コロン

喜望峰の風に乗せてのコロンのレビュー・感想・評価

喜望峰の風に乗せて(2018年製作の映画)
3.8
冒険家でもプロのヨット乗りでもない、ごく普通の男が、現在の苦境を脱すべく、軽い気持ちで名乗りを上げた単独無寄港世界一周ヨットレースへの参加。当初はやる気満々だったものの、現実を直視すればするほど、いかに無謀な試みかを痛感した男は参加を辞退しようとする。しかしマスコミや世間という怪物がそれを許さず、男は自分の意思に反して、流されるように出航させられてしまう。この時のコリン・ファースの自信なさげな戸惑ったような表情が、この先の悲劇を予感させる。流石イギリスを代表する名優。映画の邦題や謳い文句(海洋冒険映画)は全くのミスリードで、退けば屈辱、進めば死という最悪な状況に陥ってしまった男の葛藤と愛と破滅の物語だと思う。男が選んだ最後の決断は痛々しいが、「The Mercy」という原題はこの映画の本質を見事に表している。妻を演じたレイチェル・ワイズのラストの言葉が胸に沁みる。
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