わさび

ブラック・ファイル 野心の代償のわさびのレビュー・感想・評価

3.8
この映画を鑑賞したのは、あくまでもわたしの信奉するアンソニー・ホプキンス大先生のお姿を拝む為であり、且つ、大先生×アル・パチーノという映画ファンには垂涎ものの共演劇を目に焼き付ける為であり、つまりは芸術的興味からの関心というか、何というかであり、間違ってもマグ7鑑賞以来わたしのPCの検索履歴を独占しだしたイ・ビョンホンの美顔と美声にうっとりする為では決してないのだ、そうだそうに違いない、と必死に自分に言い聞かせつつ、冒頭の30分は「はよビョンビョン出てこいやああ!」と内心でギリギリ叫び続けていた事は勿論誰にも内緒である。

さて、前置きが長くなったが、低評価を受けている割には、悪くない作品だったと思う。なかなか観客を惹きつける力のあるサスペンスで、個人的には結構楽しんで鑑賞した。
尤も、多少の苦情はある。そこでそんな急展開にしちゃう!? とか、そこでいきなり場面転換しちゃうの!? などと、違和感のあるシーンに出くわす事数回。また、ラストも大した衝撃は受けなかったし、ビョンビョンの役ももう少し意味あるものにしてほしかったし、病気云々の件りは要らない気がした。
加えて、邦題もちょっと問題である。あの副題では、「ああ、野心家が代償を払わされるのか」と、観る前からある程度察しがついてしまうではないか。何故、素直に原題の通りに、「不正行為」といった題名に出来なかったのか。その方が複数の意味を持たせられるというのに。或いは、せめてこの際、「ブラック・ファイル」だけにしても良かったのに。

とはいえ、全体的にはまあまあ鑑賞に値する内容で、ところどころではセンスも窺えた。
当然、役者陣の演技も良い。名優サー・アンソニーとアル・パチーノに挟まれて、主演のジョシュ・デュアメルは霞んでしまうのではないかと懸念したが、案外彼も良かった。彼が演じたベンからは、働き盛りの、雑草魂でのし上がって来た男性特有の野心や焦りが、非常に能く伝わって来た。まあ、彼は序盤から無理のある作戦に一人で突っ走り過ぎていて、こいつ大した器量じゃないな、とは思ったけれども。

そんなこんなで、観て損はしない一本だった。
(ところでエンドクレジットでビョンビョンの役名が「会計士」になってたけど、え、そうだっけ?)
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