ろく

風花 kaza-hanaのろくのレビュー・感想・評価

風花 kaza-hana(2000年製作の映画)
4.0
僕は何もかもうまくできる人より、何もかも失敗する人のが好きだ。

まあ僕自身がその傾向があるからかもしれない。そもそもな自己擁護なんだ。それでもうまくいってない人に優しい視線をかける映画にはついつい身贔屓してしまう。

小泉今日子のよさが全面的につまっている。煙草を吸って無駄に笑い(でも笑顔ではなく)ただ生かされている「小泉」が本当に素晴らしい。相米の映画はどれも女優を信じられないくらい綺麗に撮るけど(「東京上空いらっしゃいませ」の牧瀬や「セーラー服と機関銃」の薬師丸、さらには「雪の断章」の斉藤由貴も)それはこの映画でもそうだった。なんにも投げやりで。でも投げやりには理由があるんだ(それは書かないけど)。

なげやりな風俗嬢と男のロードムービーだと花村萬月の「皆月」を思い出すけど、あれよりもこっちのが好き。この映画には人生を「あきらめた」ものにしてもまだ続くんだよっていう「厳しさ」と「優しさ」がある。僕らはダメだとしても人生は続いていく。いや終止符を打ちたくなるかもしれない。でもね、そんなことは「当たり前」なんだ。まだまだ続くの。そしてそのまま「生きているだけでいいじゃない」ってなる。事態は何も解決していない。小泉はそのまま東京に帰るだろう。浅野はそのまま仕事を失うだろう。結果いいことなんか「何もない」。でもそれでも。

まだ続くだけ幸せなんだ。

相米はこの後肺がんで50代の若さで死んでしまう。これが遺作だった。相米なりの「生きたかった」証なのかな、そう思うのは少し考えすぎだろうか。
ろく

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