バナバナ

将軍様、あなたのために映画を撮りますのバナバナのレビュー・感想・評価

4.0
韓国の人も大勢拉致されているという事は聞いていましたが、まさかここまでの有名人も拉致していたなんて。
日本で言ったら、吉永小百合さんが拉致されたみたいな感じなのかな。
こんな大物が拉致されても、国としては何も出来なかったんですね。
そりゃあ、プリンセス天功が北朝鮮から日本に帰れた時に涙を流したのも、さにあらん、ですね。

拉致された雀銀姫さんには、これまた離婚した有名監督の元夫・申相玉さんが居て、二人のお子さんは雀銀姫さんの方に引き取られていたそうですが、急にその母親が失踪してしまったので、拉致を疑った申監督が失踪先の香港を捜索のために訪れていたら、なんと申監督まで拉致されてしまう。

そして、申監督の方は元妻とは扱いが違い、クロロホルムを嗅がされ、ズタ袋に入れられて、まず招待所に入れられてしまう。
しかし、そこで一度脱走を試み失敗した申監督は、今度は政治犯が収容されている第6収容所に入れられ、洗脳教育を受ける。
洗脳されたふりを始めた申監督は、数年後平壌に送られ、雀銀姫さんが拉致されてから4年目に、ようやく二人は再会した。

そこからこの二人は恭順するふりを装いながら、約三年の間に北朝鮮で17本の映画を撮りまくり(その中にはあの『プルガサリ 伝説の怪獣』もあり)、脱出のチャンスを伺うのだった…と、事実は小説よりも奇なりの壮大な経験をしてしまうのです。

このドキュメンタリーはどこが作ったのかと思ったら、アメリカ制作でした。
申監督は拉致された当時、その時代の韓国の独裁政権から嫌われて制作会社を解体され、韓国では映画が撮れなくなっていたのです。
そのせいで、雀銀姫さんに関しては韓国でも拉致されたと認識されていたけれど、
申監督に関しては、お金の心配なく映画が撮れるから、自分から北朝鮮に行ったのではないのかと、脱出後もずっと疑われてしまったんだとか。

まだご存命だった雀銀姫さんのインタビューと、申監督が昔撮った映像を交えながら、監督が隠し撮りした金正日の肉声も聞け、こういう構成のドキュメンタリーを初めて見たので、面白かったです。

先日、フジTVの『ぼくらの時代』で、三谷幸喜と佐藤浩市と中井喜一が座談会していて、幼少の頃に裕福だった三谷氏と佐藤氏はGIジョーの人形を部隊ごと持っていて、師団をどの様に組み替えるかなど戦闘を想像してよく遊んだという事なんですが、
私には金正日が『千と千尋の神隠し』の坊に見え、大人になった坊が「連れてこい」の一言で、大勢の人を動かして、実際に他所の国民まで拉致させているのだと思うと、この現実が空恐ろしかったです。
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