震災後の福島を舞台にした中学3年女子1人と男子3人のロードムービー。<失ったものを取り戻す、ひと夏の冒険>というフライヤーの言葉がテーマかな。
都内の学校に通う冴えない男子3人。学校ではちょっと浮いた存在かも。その中の1人ノボルは、震災後、福島から東京に自主避難してきたチエコのことが気になっている。
夏休みに入って間もなく、チエコは福島の親戚に預けたはずの愛犬ハルをテレビで見かけ、逃げ出したのではないかと、とても心配する。
真剣にとりあってくれない両親にいたたまれなくなり、家を飛び出したチエコはノボルと出会う。ノボルはチエコの気を引くため「夏休み、福島に行く」と言ってしまう。すると、チエコはノボルの友達もつれて、一緒にハルをさがして欲しいと、強引にノボル達を連れ出す。
美人で気が強く、ワガママなチエコだけど、心にわだかまりを抱えている。彼女が<失ったもの>はハルだけではなかった。彼女の性格にへきえきしていた男子3人も彼女の悲しみに共振し、<失ったもの>を必死に探し出す…。
これは福島の子ども達(大人もかも)の葛藤を描いた物語。福島を去る者と残る者。どちらが正しいとか正しくないとかではないけれど、原発事故は福島の人々の大切な何かを引き裂き、奪っていった…。
それでも希望を感じる。子どもたちは、求めれば失ったものを取り戻せる柔軟な心を持っている。そして、取り戻した彼らの心はしなやかさを身に着けて、より強くなることができる。
微笑むチエコの横顔を見て、ノボルと一緒に僕らもそのことを思う。福島の子ども達に響くんじゃないかなあ、響くといいなあ、と感じる映画。