まぐ

ハルをさがしてのまぐのネタバレレビュー・内容・結末

ハルをさがして(2015年製作の映画)
3.4

このレビューはネタバレを含みます

震災で家族や友達、大切な存在を失った人を必死に犬を探す小谷の姿に投影させ、重くなりすぎないように震災にアプローチするやり方は素直に見やすかったし、近しく感じられました。震災を経験していない人にその脅威や現状を知ってもらう、というよりは、1人の女の子が震災、悲劇を乗り越え前に進むまでの普遍的なテーマを描いた映画です。

また小谷役の佐藤さんの存在感は紅一点ということを差し引いても、目を惹くものがあると思いました。

ロードムービーということもあり歩くシーンが多い中で、4人の関係性の変化を歩き姿で表現する演出がよかったです。最初は乗り気ではない男子3人が小谷の後ろをついて歩き、小谷が諦めようとすると男子3人が前を走り、そして最後は…と、視覚的にわかりやすく変化していきます。

その反面、悪い意味での自主制作らしさも抜けきれていない作品のような印象も受けました。抜いても状況が伝わるようなカットが多く、1から10とは言わないまでも8くらいまで全部を映していて、観客もそこまでバカじゃないんだから…と思ってしまいました。
3人組のキャラの差が活かしきれていないと感じる場面もあり、特にサバゲーの男の子はガスマスクのくだりがやりたいがために設定つけたのかな、と感じてしまいました。また、3人いる必要性もあまりなく、スタンドバイミーのオマージュ色を強めるためだけなのかな、と疑ってしまいます。サバゲー好きである必要性、3人組である必要性をもう少し推して欲しいというのが正直なところです。
それとどうしてもモヤモヤの残るのが、小谷が最初に男子3人と会った時に3人に対して「こんなところでなにしてるの?キモっ」「普通はこんなこと頼めないでしょ」と、他のクラスメートと同じようにクラスカースト下位の3人を差別するような発言しているんですよね…それでいて男子が地域を偏見で見てガスマスクつけるとひっぱたくって、お前何様だよという感じです。最後までありがとうもごめんなさいもないし、可愛くなかったらすこぶる嫌われるキャラだったと思います。

それもあり小谷の印象には若干キズが入ってしまいましたが、主人公が小谷をカメラにうつすシーンはよかったです。小谷が劇中1番綺麗に映ったシーンだし、最後に好きなものを撮った主人公は、これからやりたいことが決まったのかもしれないと予感させる希望に満ち溢れたシーンでした。

監督はまだお若いとのことなので、俯瞰した物言いにはなってしまいますが、これからさらに深みのある作品を作られることを楽しみにしたいです。



ちなみにハルをさがしてという題名は、春、つまり3.11に失ったものを探して、という意味で、劇中の設定が夏なのは春を乗り越えた、つまり悲しい出来事を乗り越えて新しい出会いを果たしたということを暗示してるのかな〜と思ったのですが、考えすぎですかね。
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