山と谷の仙人

古都の山と谷の仙人のレビュー・感想・評価

古都(2016年製作の映画)
-
KotoとRemains of the Days, ノーベル文学賞を得た日本人作家の作品二つ。いずれも映画化され、前者はTVドラマを含め数多くの版があるようだが、後者は小説発表4年後1993年制作の一つだけ。
川端康成の原作古都’’は新聞小説、多くの読者を得て未だに人気が高いのは、所謂大衆小説的な作りとその発表場のせいだ。日本のみの概念’純文学’に属さない、京都を素材にした凡作にすぎない。一方、日本人ながら石黒一雄はアングローサクソン文学素養を土台にする想像世界を描き、Remains of the Dayも川端の古都と一線を画す。

さて新聞小説のコンテンポラリー版がパリ・京都を重ね合わせたこの映画。書道や茶道そして教壇の先生など京都人が協力出演する京都市のプロジェクト、すなわち誠に見え見えの宣伝映画。’’ほんまもんの京都のお人はでひゃらしませんえ’’と言う人は多く、観光群衆で悲鳴をあげる裏面と共に、京都の奥行きは広い。
映画作品としてこれら二つを比べると、月とスッポンであるまいか。アンソニー・ホプキンスは執事たる格調に固執する人物を武士の忠義のように描ききり、新作古都の若主人役は一体何を演じているのだろう。京の宣伝映画ならば、昭和38年公開版(主演:岩下志摩)の滴る潤いに迫ってほしかった。若い監督は多くの若いキャストを並べて使いあぐねている。世界中で1分ごとに一つの映画が作られるそうな…、USAやIndiaでエンタメ作が大量生産される。日本も例外ではないと言うことだろう。
山と谷の仙人

山と谷の仙人

山と谷の仙人さんの鑑賞した映画