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プルーフ・オブ・マイ・ライフのkomoのレビュー・感想・評価

4.2
数多くの業績を残した天才数学者のロバート(アンソニー・ホプキンス)は、晩年精神の病にかかり研究はおろか日常生活すらも困難となっていた。
そんな父を一人で介護し疲弊しきっていた娘のキャサリン(グウィネス・パルトロー)は、父の亡きあとも精神的な不安定さを抱えていた。
そんな彼女に寄り添う、ロバートの教え子のハル(ジェイク・ギレンホール)。しかしある出来事でキャサリンを疑ってしまう。
傷つき動揺したキャサリンは自身の言葉が正しいことを”証明”するべく、父と過ごした日々を追想するのだが…。


かなり好きな作品ですが、フィルマの平均点が低くて悲しい😭
先日レビューした『ゆれる』の見せ方にも少し通ずるような、完全な答えが提示されていない物語。

天才数学者の娘のキャサリンは、父の血を受け継ぎ彼女自身も数学を研究する素養がある人物です。
しかし父の不安定な性質までも受け継いでおり、学業を諦めて介護を続けた末に気性も激しくなり、周囲からは『父親同様おかしくなってしまったのでは』とすら思われてしまいます。
キャサリンの言葉を信じてくれる人はいない。優しい恋人のハルでさえも。
どうにかキャサリンを信じようとして理論的に根拠を集めようとするハルの傍ら、いつしか本当に自分自身のしてきたことがわからなくなってしまうキャサリン。
混濁した記憶の中、自分自身の正しさを『証明』する術を見つけようとします。
数学に『プルーフ(証明)』が必要なように、キャサリンの人生にも、自分が確かな存在であるという証明が必要でした。

歯切れの良い映画を求めている人には確かに響かない作品かもしれません。
私はこういう、『煮詰めて煮詰めて作った料理を誰も食べてくれなかった、けれどお皿を用意してそれを待ってくれていた人がいたことに後から気づいた』みたいな、苦しむ時間は長いけれどたったひとつの真実で救われる話がとても好きです。

キャサリンと姉のクレアのやりとりは見ていてムズムズしたなぁ…。クレアにもキャサリンに対する愛情や罪悪感はあり、キャサリンを救いたいという想いは本物なのだろうけれど、しかし何故かキャサリンが求めているものを提示できずにすれ違う。
肉親でも分かり合えない人がいるという描写がこの上なくリアル…。

最近すっかり狂人役が増えた(笑)、ジェイク・ギレンホール様が爽やか好青年で眼福でした。
それと、ベッドのあとに様々な記憶が押し寄せてきて涙するグウィネスの演技に惹きつけられました。
この作品は何年も前に観たことがあり久々の再鑑賞でしたが、そのシーンはやけに覚えていました。
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