クマヒロ

RAW〜少女のめざめ〜のクマヒロのレビュー・感想・評価

RAW〜少女のめざめ〜(2016年製作の映画)
4.7
『TITANE』のジュリア・デュクルノー監督作品らしい納得の一筋縄では行かないホラー映画でした。

カニバリズムへの目覚めと少女が大人になっていく目覚めを重ねており、つまりそれは性への目覚めを伴います。その辛さ、痛さ、生々しさを画で伝えてくることがとにかくデュクルノー監督に好感が持てるところで、食肉シーンに限らず、うちから湧き出てくるように毛を吐き出すシーンや獣のように変化した主人公の姿にも物語的必然性と作品を豊かにする工夫が盛り込まれていることが本当に素晴らしいと感心してしまいます。

『私ときどきレッサーパンダ』は子供から大人になるときの体のままならさを描いており、ある種近いものを感じました。

交通事故から始まり、家族の愛の形、それを模索する姿を描いたり、生きることの痛さ、辛さをしっかり観客に画面の衝撃で与えてくれたり『TITANE』同様にデュクルノー印というものを強く感じさせられます。

喉がカラカラに乾くほど集中してみてしまいました。『TITANE』はより作品に厚みがあり複雑な面白さがありましたが、ワンテーマでそこに多層的な意味を持たせている本作は観やすく、デュクルノー監督作品の長編作品一本目としていつまでも愛すべき作品です。
観る前には気合がいりますが、今後ことあるごとに観てしまいそうな作品です。
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