やっぱこの監督の作品好き！
厳格な家庭で育った抑圧からか、タブーを犯すことに魅入られる少女。
まさに食肉バージンを解禁した少女の鼻からは、処女膜を破ったかのように血が流れだす……
ベジタリアンで優秀な成績を修めて大学に進学したジュスティーヌは、入学の儀式で生のウサギの腎臓を食べさせれらる。
始めは体に蕁麻疹が出てしまったものの、そこから生肉への欲求が抑えられなくなる…というもの。
段階的に事態が深刻になるさまを描写するのが上手く、
始めは学食のハムを盗み、その後冷蔵庫のササミを食べる。
そしてついに、姉が誤って切り落とした指を口にしてしまい…
面白かったのが、食べたのをクイック（飼い犬）のせいにしてしまったこと。
姉の手口の周到さを見ると、彼女もまた早い段階からカニバルを覚えていたのかもしれない。
人間食を覚えたジュスティーヌが、同室の男を見る目がすばらしい…
バスケットボールをするアドリアンの躍動する筋肉を見て、口元ではヨダレが照り光っている。
まさに「食肉欲」と「肉欲」は似ているのかもしれない。
始めは「猿と人間を同一視していた彼女も、飼い犬の安楽死になんとも思わなくなる」変化にはゾッとした。（犬の解剖にも何の抵抗もなくなってしまったため、それをアドリアンは異様な目で見る）
最後のシーンを見ると、少女たちのカニバルは血縁（またも血…）が由来だったことがわかる。（つまり厳格な教育方針による反動なんかじゃない）
冒頭、道路に飛び出すことで車の事故を引き起こさせた少女は、ジュスティーヌか、はたまた彼女の母親か。。。
父親の唇の傷には全く気づかなかった。
この監督は絵づくりも素晴らしく、グロテスクなのに美しい描写が鮮烈。
この文明社会に至っても、野獣のごとき原始的な肉体のかじり合いを高尚な映像美で見せつけるセンスに脱帽させられる。
