まさやん

RAW〜少女のめざめ〜のまさやんのレビュー・感想・評価

RAW〜少女のめざめ〜(2016年製作の映画)
3.8
世の中には、"17歳女子"という映画ジャンルがあると勝手に思っていて、それは少女から大人の女性へと変貌を遂げるまさに過渡期の葛藤を描いたもので、

そのほとんどが、恋愛を通じて一皮向けて、外の世界に気づき、自我に目覚める成長の物語なのです。

それまで過ごしてきた小さな箱の中から飛び出して、自由と解放に浸り、本当の私デビュー!の一方で、それ以前とのギャップに不安を感じたりホームシックになったりする17歳女子の心理を描くもの。

処女を捨てる瞬間(男で言えば童貞卒業)というのは時代も場所も問わず普遍的なテーマであるのでしょう。


例えを挙げるとすれば、『17歳のカルテ』『ゴーストワールド』『スウィート17モンスター』『ローラーガールズダイアリー』『17歳の肖像』『シェルブールの雨傘』などなど…

本作も(設定は16歳みたいだけど)まさに人生の過渡期において、自我に目覚める愛と成長のストーリー。

失神者続出という前評判を聞いていたので覚悟して見に行ったけれど、思ってたほどグロシーンも少なく、正統派の文学映画として見ることができました。
(本来、こんなに冷静に語ってしまっていいような映画ではないのだけれど)


主人公ジュスティーヌのカニバリズムへの目覚めは、まさしく自我への目覚めであって、それを押さえつけてきた両親への思い、一足先に歩みを進めた姉との対比、

"自我の目覚め"という大きな物語を、端的なメタファーとしてホラー(?)要素にまとめあげた技量は圧巻。

心情描写の手法として色彩を強調するフランス映画の流れもきちんと組んで、美しさが終始維持されているあたり、次回作にも大いに期待できます。

フランス映画、大型新人の登場と言えるのではないでしょうか。

冷蔵庫の前に座り込み、してはいけないことと分かっていながら、ついに手を出してしまったあのシーン。あの表情と間は、本当に素晴らしく、あれだけでも1,800円を払って見にきた甲斐がありました!
まさやん

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