笹井ヨシキ

東京喰種 トーキョーグールの笹井ヨシキのネタバレレビュー・内容・結末

3.3

このレビューはネタバレを含みます

面白そうだったので鑑賞して参りました。

原作は全くの未見でどんな話なのかも良く知らなかったのですが、世界観が突如としてスイッチし容赦のない一面を現すショッキングな展開や、人間と喰種、二つのアイデンティティをせめぎ合わせる人間ドラマ、「食」や「復讐」といったテーマ性などそのポテンシャルを感じられる映画となっていてなかなか面白かったです。

まず序盤の演出がとても良いですね!

主人公のカネキが片思いしているリゼという女性とベタベタな恋模様を描いておきながら、突如としてバイオレンスな様相を呈する展開にも引き込まれますが、さり気なく強調される食事描写が長編監督初とは思えない秀逸な撮り方をされていてとても関心しました。

タマゴサンドやスパゲティ、菓子パンをカネキが食べるんですが、その食い方がどこか片手間というか煩雑で、「食べる」ということがいかに簡単に処理されてしまっているかという感じが実に良く出ています。

後に「食べる」という行為が「飢え」となってカネキを襲う展開になると序盤のこの描写が効いてきて、食事によって得られる快楽や他人とのコミュニケーションが得られない悲痛さが伝わってきて良かったです。

今作の魅力って喰種という架空の存在を通して人間の生が当たり前のように保証されている世界への違和感を示しているところなのかなと。

喰種たちが葛藤する「飢え」や「自分が存在していることが本当に正しいのか」っていうのは、飽食の日本においては馴染みがなく、あまり考えることもない。でも本来は一番に考えるべき問題であり、人間本位の世の中でぬくぬくと生を謳歌してきたカネキを叩き出すことで、生の根源的なテーマに肉薄するという尖った試みが「東京喰種」という作品のオリジナリティなのかなと思いました。

もう一つのテーマである「復讐」の描き方も良いですね。

喰種たちを追う間戸という男は詳しい描写がないにも関わらず、グールに大切な人を殺され「復讐」に執着する異常性が大泉洋の演技によって表現されていて巧いんですよね。

間戸により始まった復讐の連鎖を止める意外なキャラクターの活躍も、彼らの争いを終わらせる希望の象徴のような展開となっていて感動的でした。

アクションは特に訓練シーンが出色の出来で、清水富美加の佇まいは美しく説得力がありました。落ち着いた雰囲気の中に成長していくヒロインらしさもあり、窪田正孝とも好相性だったと思います。

逆に対決シーンは体技を生かしたシーンが見られずちょっと肩透かしだったかもしれません。CGは意外と違和感がなくて良いんですが、トーカと間戸の対決は動きがあんま無くてちょっと残念でした。
あと亜門君の武器単純にダサすぎないですかね?w 使いにくそうだし間戸のように遠距離にも対応できないし、何とならなかったのかな?映画化に際し亜門の武器に関する何らかの描写が抜け落ちてしまったんでしょうか。

あとそもそも岩松了演じる医者が何故カネキに喰種の臓器を移植したのかとか、結構気が散る無駄な豪華キャストとか、続編のために必要な要素だったのかもしれませんが、原作未読者の自分からすると消化不良でした。

ついでに言うなら東京の街並みも通行人がいなかったり、大規模バトルなのに人々がパニックになって逃げる描写がなかったりと少し不自然なところもありましたね。細かいことかもしれませんが、「東京喰種」という東京という場所が重要な作品でもあると思うので、もう少し気を使ってくれたらもっと良くなるんじゃないかと思いました。

とはいえ娯楽作と侮れないショッキングな展開と尖ったテーマが興味深い作品でした!
色々事情があり続編があるかは微妙なようですが、あるならまた見に行きたいと思います!
笹井ヨシキ

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