時代に翻弄されたひと組の男女の、馴れ初めから別れを描く。
互いに相手の今後を思いやりつつも自分の気持ちとはなかなか折り合いをつけられない、その複雑な心境を繊細に繊細に表現する。
戦後日本の退廃的な空気と物語内での二人の関係性がシンクロして、なんとも物悲しい仕上がり。ただそこには滅びの美学とも呼べる独特な風合いがあり、鑑賞者をズリズリとその世界観へと引き込んでいく。
「あなたって自分だけがかわいいんだわ」など、作品通して多くの人へ突き刺さるような言葉が散りばめられる。文芸的であると共に、メッセージ性もまた高い。