あいうえお

大親父と、小親父と、その他の話のあいうえおのレビュー・感想・評価

4.0
光と闇(監督は「秘密」と表現していたが、完全なパーソナルなものではなくて、コミュニティ内で察される程度に共有できるレベル)の物語。

「追い詰められていく人間」を描く他作品と全く異なるところは、主要登場人物に序盤から「避妊すれば金がもらえる」という逃げ道(行き着く先?)が与えられている点。戯れる若者たちの底抜けの明るいパワーがそこから来ていると考えると、非常に恐ろしく思える。死のにおいのしない明るさ。

観客はあの楽しそうな戯れ(しかもあんな狭いところでじゃれ合っている)を見る限りでは、彼らが集まるべくして集まった、傷を舐め合う集団であるとは信じたくはないのだけれども、ああいうコミュニティが出来る理由はある程度分かってしまうわけで、、
あんな立場に置かれた登場人物から充足感を出そうとするような、やさしいと見せかけて非常に残酷なまなざし。

個人的にこの作品の魅力が分かりやすく出ていると感じた箇所は、子どもが携帯を海に捨てるシーン。条件反射的な飛び込みのおかしさと、キ○タマと交換した大事な物の扱いのひどさに不覚にも笑ってしまった。