あなぐらむ

ひと夏の秘密のあなぐらむのレビュー・感想・評価

ひと夏の秘密(1979年製作の映画)
4.2
日活ロマンポルノの夏定番「ひと夏」路線に原悦子大明神が出演した一作。
脚本の田中陽造は舞台を福島県勿来に設定し、この場所が「来るなかれ」とされる彼岸との境界である事を匂わせる。

継子の悦子様は江角英明の警官の父に犯され処女を喪い都会へ逃げるが、父危篤の知らせに帰郷しそこで陰のある青年・田山涼成(!)と出会う。
この海辺は昔、牛の屠殺場だった事が語られ、同時に自殺した夫の水死体が上がるのを待つ渡辺とく子と地元の若者(こいつが一番悪い)と交互に物語は進む。

皆が死の薫りに絡め取られているような世界で、儚げな悦子様が菩薩のような裸身で癒していく。
射的の鉄砲が小道具として後半にも活きてくるのは大和屋竺「愛欲の罠」を感じさせ、横溢する心中風味に相変わらずの田中陽造節が漂う。
新人・萩原友絵が小悪魔を好演するが、本作のみのようでjmdbには記録がない。残念だ。
途中の渋谷パートで、今とは景色が違う東急プラザ(もう無いよ)の景観が見られる。