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永遠と一日のsiのネタバレレビュー・内容・結末

永遠と一日(1998年製作の映画)
4.7

このレビューはネタバレを含みます

冒頭があまりにもゆったりとしているのでついつい寝そうになったが、撮影エグすぎてどんどん引き込まれる。

子供との出会いシーンが素晴らしい。信号待ちの車の窓掃除を勝手にやっては小銭をせがむ子供の集団。主人公の車にもやって来るが、突然背後から警官らしき人たちが子供たちを追いかけてくる。慌てて子供を車に乗せて逃げ、その日は別れる。別の日に町外れで怪しい行列を見つけ、それを追うと移民の子供売買オークション会場にたどり着く。あの日の子供を見つけハッとする中、一人が窓ガラスを突然割って逃げることで子供には不本意なことが行われていることを知り、例の子供を助けて本国に帰すための旅に出る。これだけのことが素晴らしい映像美で台詞に頼ることなく理解出来るのだから素晴らしい。後からそういうことだったのかと分かるから面白いんである。それにフレームの下側から人が入って来るのがとにかく気持ちいい。

アンゲロプロスの映画は物語が詩的過ぎてよく分からないところがあるものの、意外に分かりやすいシーンもあってそこが凄くよい。詩人が異国に行って、現地の言葉が分からず、人々から知らない言葉を買って歩いたエピソードをカメラパンで地続きに時空を変えるのも良いが、その話を聞かせた後、実際に子供が近くにいる人々から「言葉」を買いに行く。これだけでも可愛いのだが、いろいろあって子供と遂に別れる時、子供が知らない単語を発する。その意味を教えてもらった時、作家がそっと小銭を渡す。こういうのは無茶苦茶グッと来る。

別れる手前に黄色い服を来た自転車の人々が通り過ぎるシーンも異次元の美しさ。景色や夜景を撮ってただ美しい映画は多々あるが、アクションとして色彩を取り込める映画はそうそうない上、構図もバキバキに決まっているから凄い。二人がポツンと立っている引きの画も鳥肌が立つほど素晴らしいし。

出来ればフィルムで見返したいけど東京しかやらないだろうな。亡くなった時のシネコン追悼上映に行っておくべきだった…。
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