いろどり

永遠と一日のいろどりのレビュー・感想・評価

永遠と一日(1998年製作の映画)
4.5
いつも渋いブルーノ・ガンツがこんなに優しく笑っている映画は初めてだった。

「旅芸人の記録」は過去と現在の繰り返す過ちを円環構成にしていた。
今作では死期迫る老人と少年による繰り返す生と死の円環を感じさせた。

この世とあの世の境のようなアルバニア国境からは時空を超えた人々の悲哀が感じられた。幻想的なのにリアルな悲しみが突き刺さるこのシーンは忘れられない。

少年が長回しで詩の朗読のようなセリフを言うシーンがあり驚愕。

追憶の彼方では笑顔の美しいあの人。
振り返れば山ほどある後悔も言葉を持って受け止め彼岸へ向かう人生の総括。

よそ者同士の自覚を持った孤独な2人の共鳴。だけど決して悲しい映画ではなく、人間の温かさ、生きることへの肯定を感じられる優しい作品。

予備知識を必要とすることの多いアンゲロプロス作品において今作は政治色は薄めで、生と死、老い、愛といった人間の普遍性が深い部分に沁みわたる名作だった。
いろどり

いろどり