せーや

ヒトラーの贋札のせーやのレビュー・感想・評価

ヒトラーの贋札(2007年製作の映画)
3.5
正直な話、
リアルな人間の心情なんて
こんなもんじゃないでしょうか。

戦前に贋札技術で財を成したユダヤ人、ソロヴィッチ。
彼は第二次世界大戦の最中、ナチスによって捕らえられ、贋札製造をさせられることに。

ナチスを描いた映画は数多くある。

ナチスを批判したもの
ナチスの目線から描いたもの
ヒトラーの生涯を描いたもの
ユダヤ人迫害を描いたもの
ユダヤ人の抵抗を描いたもの

そんなナチスの映画の中でも、
今まで見たことのなかったタイプの映画がこれ。

第二次世界大戦で
ナチスドイツ政府がイギリスの経済混乱を目論んだ贋札製造計画「ベルンハルト作戦」を描いた作品。

ナチスに歯向かわず、
ナチスに捕まらず、
ナチスに「生きるために協力」したユダヤ人。

そもそもこんな作戦があったことすら知らなかった。
ナチスドイツ時代の驚いた作戦は、この「ベルンハルト作戦」と「ワルキューレ作戦」。
この2つは色んな意味で意外だった。

ただ、今回テーマになるのはそこではなく
「生きる」ということ。

生きるために悪に荷担するか
正義のために悪に歯向かうか

今の「命」か
未来の「命」か

贋札をつくることで
虐殺されることを逃れたソロヴィッチたち。
しかし、贋札を作るということは
ナチスドイツが戦争に勝つ見込みを作ってしまうこと。

自分が今ここで正義の名の下にナチスドイツに立ち向かい、そして将来のユダヤ人のために死んでいくか
それとも他人など構うことなく、とにかく今日、明日の自分の命を守るために、ナチスドイツに従うか。

世の中には多くの反戦映画があります。
「正義」を掲げ命を落としていく者たちを描いている多くの映画があります。
でも、そんな映画より、こういった自分の命に執着した者たちの方が、僕は共感できます。

そりゃ世のため人のために命を張る人は
素晴らしいと思いますよ。
でも、大半の人はそんな素晴らしい生き方はしてないし、誰しも自分の命が可愛いもんです。
他人のために(家族は抜きとして)命を捨てられるか、そんなこと僕には絶対にできません。
ひねくれてますけどね。

だからこそ、高潔な生き方をしていたり、思い切った生き方をしている映画の中の人たちが羨ましくて、僕は映画を見てるんじゃないかと。

本作は、そんなことを考えさせる映画では。

ちなみに、主人公ソロヴィッチ役の人は
ステイサム兄さんの実の兄弟です(嘘)。
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