takato

ジェイク・ザ・スネークの復活のtakatoのレビュー・感想・評価

4.3
 これは「ロッキー」や「聲の形」と同じ物語。自分を失った男が、苦難を乗り越えて真の自分自身へと成長する物語。

 人間において大切なことは、目的意識、自己承認、そして環境の三つである。本作のジェイクもロッキーも石田君も苦難を経てそれらを失い、自己に呪いをかけた。即ち、自分はゴミで、愛されることも顧みられ価値もない人間だという自己否定である。これこそ人が人に与える最悪の呪いだろう。他人の意見は、究極的には他人の物に過ぎないから離れることは容易い。しかし、自分の想いから自分を離すことは難しい。彼らは苦難ゆえにというより、自分で自分を破壊したのだ。自分を愛することもできない人間が、どうして人生に意味を見出せるだろうか?。

 しかし、彼らは復活した。目的意識を持つことで自分を変える努力という道に進めた、愛する人達という環境のおかげで自分の価値を見定めることができるようになった、そして最終的に自己承認という答えへと至った。自分を自分で真っ直ぐ認められるようになった時、彼らは世界を人生を認めることができた。苦難を乗り越えたからこそ、彼らはより大きな人間に成長できた。閉じられていた世界が彼らに開かれたのだ。

 苦悩知らぬ人間に災いあれ、彼らは真の自分を問うことも、世界や人生に対しても無自覚な羊である。

 苦難を乗り越えた者に幸いあれ、彼らこそ無自覚な生でなく、人間としての生を歩む真の人間である。
 
takato

takato