このレビューはネタバレを含みます
出足はそこそこ怖い。
監督も清水崇で脚本も清水崇。
『ハーメルンの笛吹き男』を下敷きにしている。容姿と声が浮世離れしている滝沢秀明が「こどもつかいのトニー」を演じるが、これはいい。
残念だったのは「こどもつかいのトニー」の合理的な理由づけを行ってしまったこと。過去の名作「リング」や「らせん」は「理由づけ」に走って全く面白くなくなった。
単に「こどもつかいのトニー」という伝説・「言い伝え」の状態にしておいてホラー系のファンタジー映画を狙えばよかったのだが、つじつま合わせをしたがるのは男性の悪い癖だ。
例えばわざわざ上之郷サーカスの悲劇エピソードを盛り込むも、そこでのトニー探しは冒頭の怪事件と繋がっているようで実は繋がらない。
ならば怪奇現象はなぜ東京郊外だけではなく日本全国で起こらなかったのか。結局その合理的説明が必要になる羽目になった。そしてそこは放置と雑だ。
私はこのパートで完全に冷めてしまった。
そして蓮君が原田尚美(門脇麦)を「要らないママ」として、それを「こどもつかいのトニー」が受け止めたら尚美は死なねばならない。
実の肉親でなくとも子供の被害届があれば死んでしまうのは近藤創(尾上寛之)が証明しているのだから、準主役が、例え身ごもっていたとしてもその規則性を合理的な理由なしに勝手に覆してはいけない。こういう甘いところが随所にあるのはつらい。
結局監督と脚本を任された自由度のなかで、全体の整合性が取れないツギハギだらけの物語になってしまった。脚本は誰かがしっかり校正するべきだったと思う。「もったいない」のひとことだ。