りりー

ぼくと魔法の言葉たちのりりーのレビュー・感想・評価

ぼくと魔法の言葉たち(2016年製作の映画)
4.2
映画を観ることが生き甲斐、なんて思っているわたしにはとっておきの映画だった。映画はたしかに人を救うのだ。こんなに心震えることがある?

二歳で突然言葉を失ったオーウェンは、だいすきなディズニーアニメによって言葉を取り戻す。オーウェンはディズニーアニメを通して世界を見ているのだ。でも、現実はディズニーアニメとは違う。叶わない夢がある。報われない愛がある。キスのあとには続きがあること、生きていくには働かなくてはいけないこと、わたしたちは年を取っていつかは死ぬこと。ディズニーアニメでは描かれないことを、オーウェンはどうやって学んでいけばいいのだろう。オーウェンの将来を心配する両親、不安に苛まれる兄の姿が苦しい。現実はシビアだ。それでも本作は明るさを失わない。それはオーウェンが愛するディズニーアニメがたっぷりと挿入されることや、オーウェンをはじめ登場する人々がどこかユーモラスなことによるものだろう。オーウェンにはできないこと、苦手なことがいくつもある。けれど、得意なことやすきなことだってたくさんあるのだ。そのポジティブな姿勢が全体を通して感じられてよかった。

終盤、大勢を前に堂々とスピーチするオーウェンがかっこよかった。自立って、ああいう姿のことをいうのだろう。きっと彼は大丈夫、未来は明るい。家族もそう思ったんじゃないかな。
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