とむ

校庭に東風吹いてのとむのレビュー・感想・評価

校庭に東風吹いて(2016年製作の映画)
3.1
場面緘黙症の子供や貧困の母子家庭の問題を観客に訴えようという真摯な姿勢は称揚できるのだけれど、問題の解決のために奮闘する小学校教諭の沢口靖子があまりに品行方正かつ模範的すぎて、ロールモデル的な作為感を終始拭うことができなかった。
沢口のはきはきとしている一方で平板的な演技にも不自然な印象を受け、感情移入しにくい(これは沢口の演技というよりも行儀の良すぎる脚本の問題なのかもしれない)。

でも実際のところ、映画に何を求めて見に行っているのかによって受け取り方は正反対のものになってしまうのだろう。
予想を超えるような劇的な展開や圧倒されるような俳優の演技、リアリティーなど劇映画としての醍醐味を期待していても拍子抜けしてしまう。逆に誰にでも理解できる親しみやすい教育映画としてこの作品を受け取るのなら、こんなにも親切でまっとうな映画もなかなかないのではないか。

しかし分かりやすさに重きを置くのはいいとしても、一部のシーンに挿入されるわざとらしい効果音やインコが逃げ出したときに沢口がとる態度など、悪い意味での軽さも気になってしまう。

そういう点でこの映画の予定調和的なストーリーや演出は自分の感性には馴染まず、退屈に感じられてしまった。
とむ

とむ