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光と禿のこのレビュー・感想・評価

光と禿(2016年製作の映画)
2.0
まだMOOSIC LAB2016作品を観ている途中ですが、明らかに映像の部分の完成度でいうと、この作品があるダントツでしょう。ライヴシーンの撮り方含め。いい意味でも悪い意味でも、変に撮り方に主張を乗せることもなくソツなく撮っている、という印象です。

僕は岸井ゆきのさんのかわいさがイマイチぴんと来ないというか、ばしっとはまらない部分があります。本作でもずーっとかわいい、というわけではなかったんですけど、ところどころかわいいなと思うシーンもあったし、ほっぺをぐりぐりつねられるシーンは完全に白旗あげました。あんなに顔いじられてかわいいって反則だと思いました。また、『友だちのパパが好き』でベッドシーンを披露したり(エロくはなかったものの)、本作では入浴シーンが2回、それに伴う風呂上がりのシーンも含めて、なんだか妙に部屋着が似合う女優さんですね。そろそろ入浴関係のCMオファーが来そう。

映画自体のストーリーの感想になるんですが、スギム(クリトリック・リス)のキャラがピュアすぎるだろうと思いました。そこに僕は嫌悪感を抱きました。盲目の少女を演じた岸井ゆきのさんの演技の上手さと比べて、スギムさんの演技がどうにも浮ついている印象がどうしても最後まで拭えず。セリフを言ってる感が半端ではなかった(まあ、そこがいいという人もいるとは思いますが)。

演技の面もありますが、とにかくキャラ造形がピュアすぎるでしょう。「おじさんの曲、聴かせてよ」と言った岸井ゆきの演じる梢のために(この梢という役名もいかにもな感じ)もう音楽をやめた後輩に頼んでギターを弾いてもらい、カラオケで歌い、果てにはライヴまでやるのですが、スギムの娘役の子と同じく「なんでそこまでするの?」という疑問がずっと離れず。
単純に、次にもう決まっているライヴに梢ちゃんを誘えばよくない?なぜあの子のためにわざわざ娘に借金までして、出禁になっていたライヴハウスに金を返してまでするのか、その動機が薄い、というかないように思います。「この子のために、今すぐにでもライヴをしないとダメなんだ!」という切迫感が全くない。例えば梢ちゃんがもう光すら感じることが出来なくなってしまうとか、(クサイしダサいし、仮にそうしてたとしても面白いとは思わないけど)治療のために海外に行ってしまうとか、何かそういう切羽詰まったものがあればあの行動も分かる気はしますが、なんでわざわざ…という。
しかも、これは映画を観た印象でしかありませんが、スギムさんってこれまで何度も「頼むわ〜助けてくれ〜」と言って娘にして借金してきたと思う。土下座だって何度もしてきたと思う。だから、娘に金を借りるシーンに何の重みもないし、貸さねえだろって思った。ましてや、自分と同世代の女の子のためにライヴしたいって、なんでそんなことのために身内から金を借りるのか、さっぱり理解できない。

たぶんそれは、映画の中の世界観がとても優しくて、スギムさんに対してもみんな優しいから、社会から嫌悪されるべき存在としてのスギムさんがそこにいないからだと思います。だから、ライヴシーンは、うまくてカッコイイはいいんだけど、恐らくスギムさんの生のライブで感じされるような解放感は感じない。そまそも、中年男性があんなピュアな動機で動かないでしょう、普通。周りの人間も含めて、もっと堕落した部分も見せないと、そんな社会的にはダメダメな奴が1人の女の子のために必死になる、という行為に対して気持ちがのらない。最近、中年男性を天使的存在として描いた映画なりドラマが多すぎる気がします。

また、梢ちゃんを母親的立場で見守るあの子(役名を失念)が、スギムが音楽活動をするときはクリトリック・リスという名前で活動をしていることを知り、「私たちに嘘の名前を教えていたこと(嘘というか、音楽活動をするときの名前を教えていなかったこと)」と「名前がクリトリスを連想されること」の主に2点において梢に「ライヴに行っちゃダメ」と言うのですが…。まず、活動内容によって自分の名前を変えるって、別におかしくもなんともないですよね?教えなかったのは、スギムが自分にコンプレックスを抱いているということ(まあでも、教えないのは妥当ではありますかね)だと思いますが、そこまで怒ることかと。あと、「名前がクリトリスを連想させる」という点についても、なんなの、梢ちゃんはお嬢様なの?と思いました。恐らく大学生ぐらいの年齢設定だと思うし、過保護すぎるのでは。そう言うのなら梢ちゃんが下ネタが嫌いである、という描写が必要な気がします。「障害者は下ネタとか汚いものは嫌いなはず、だって普段から私たち健常者より何倍も頑張ってて心が清いから」というテンプレそのもののような気がして、視力はあるけど全然見えてねえじゃん、と思わされた。それは梢ちゃんも指摘するけど、その後何でもなかったかのように2人で仲良くライヴに行くのも、何だかなぁ…と。

挙げつらねるともう終わりが見えないのでここでやめますが、この作品が観客賞というのは、うーん妥当といえば妥当なのかもしれませんがちょっとなー…と思った次第です。
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