【 人生は儚い、そして映画は美しい 】
とても静かで、美しい映画。
絵画を見ているかのような風景。
ピアノがメインのクラシック音楽が流れる。
5.1chホームシアターにて鑑賞。
自然の環境音がサラウンドに配されて、
更に絵画的映像、そのノスタルジックな世界に没入。
19世紀、花や緑に包まれた美しいフランスの片田舎にあるブルジョワの邸宅が舞台。3世代の女性たちの輝いた人生をどこか神の視点から見てるような錯覚に陥る映画。
監督のトラン・アン・ユンはベトナム出身(戦争移民)のフランス パリ育ち。彼の美的センスは「青いパパイヤの香り」で既に実証済み。今回は脚本も担当し、衣装や映像処理のこだわりも徹底して、ナレーションと音楽で物語を綴るなど独創性はしっかり出ていたと思う。低予算、そして制限された環境のなかで、作家性を出しながら完成させた監督の強い意志を感じる。
撮影監督はウォン・カーウァイの「花様年華」でクリストファー・ドイルと組んでいたマーク・リー・ピンビン。緑深い庭や木漏れ日など自然光を捉え、スローを効果的に使った流麗なカメラワーク、多くのカットにこだわり持ってる感じ。
女優陣は主役扱いのオドレイ・トトゥに、メラニー・ロラン、ベレニス・ベジョ。でもこのなかでは監督で歌手でもある国際的アーチストでタランティーノの「イングローリアス・バスターズ」のユダヤ人ヒロインを演じたフランス人女優メラニー・ロランが美貌と風格と存在感を示していて、いちばん良かったかも。
<付録 : サウンドトラック>
映像とともに重要な要素であるクラシック音楽が終始流れていてバッハ、ショパン、ラヴェル、ドビッシー、フォーレ、ヘンデル、リストと錚々たる顔ぶれ。
採用された曲の多くを演奏するのがイタリア人ピアニストでフランスに帰化したキャリアを持つアルド・チッコリーニ(Aldo Ciccolini)によるもので、フランス近代音楽似造詣が深く、それを擁護している第一人者というだけに興味深いなって。監督の好みかな?エンディングのリストの曲もアルドによる演奏。
映画の中で印象的だったのを、エンドロールから拾ってみると…
※バッハ
カンタータ第156番
「わが片足すでに墓穴に入りぬ」
https://youtu.be/dvaJWOJKEOc
映画はこのバッハの曲がゆったりと3小節目から始まって、タイトルからも映画のテーマを暗示してるような気がした。
※ドビュッシー
月の光 (Clair de lune)
https://youtu.be/o_ZG-Qa5nhY
アラベスク 第1番 (Arabesque No. 1 )
https://youtu.be/Yh36PaE-Pf0
プレリュード第6曲
https://youtu.be/Eym3nCRxev0
スラヴ風バラード
https://youtu.be/dISMkyApwTg
※ヘンデル
サラバンド(Improvisation on the Theme of "Sarabande" )
https://youtu.be/L1DRkCOMKqw
※フォーレ
レクイエム(Requiem in D Minor, Op. 48: III. Sanctus.Andante moderato)
https://youtu.be/cfHhzxr7VBI
※リスト
愛の讃歌
https://youtu.be/loYI1dk5SBo
巡礼の年 第2年「イタリア」
https://youtu.be/vCa-89e_4Rs
孤独の中の神の祝福
https://youtu.be/231R1VOX_3o
詩的で宗教的な調べ S173/R14 - VI
https://youtu.be/3qai-kK90A0
※リヒャルト・シュトラウス
ピアノソナタ ロ短調 作品5 II.
Adagio cantabile
https://youtu.be/aVP5Dyzs8yA
※ ジョン・コリリアーノ(現代音楽)
Fantasia On An Ostinato
https://youtu.be/2b0Zf4dwppY
家族が一緒に過ごしている場面、
日常で繰り返される何気ない場面、
美しいけど、
儚げで、
どこか切ない感じだった。