サマータイムブルース

聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディアのサマータイムブルースのレビュー・感想・評価

3.7
鹿は最後まで出て来ませんでした
タイトルの意味は、ギリシャ悲劇『アウリスのイピゲネイア』に基づいているとのことです
映画の後半に娘のキム(ラフィー・キャシディさん)が「イピネゲイア」の論文を書いて学校で評価Aをもらったというシーンで示唆されています

ホラーですけど、悪霊も、殺人鬼も、ゾンビも出て来ません、グロシーンもありません
その代わり、男のワキ毛が出て来ます
心理的にジワジワ来ます
特徴的にロングカットが多用されていています
あと、音楽、というより、効果音が不気味に響きます

マーフィー家は、父、スティーブン(コリン・ファレルさん)(名だたる心臓外科医)母、アナ(ニコール・キッドマンさん)(眼科の開業医)、子供は2人いて、長女キムと長男のボブ(サニー・スリッチさん)の一見幸せそうな4人家族です
家族は裕福で、序盤は愛情あふれる日常が映し出されます

そこに、父の元患者の息子で、16歳のマーティン(バリー・コーガンさん)が近づいて来ます
そこから不穏な出来事がジワジワと起こります

まず、ボブが体の不調を訴えます
検査のため病院に行きますが、結果は異常ナシ
安心したのもつかの間、帰路、エスカレーターを降り切ったところで、再びパタっと倒れてしまいます
その時の真上からのロングカットが印象的でした

徐々に弱っていくボブを最新の医療施設であらゆる検査をするも、すべて正常、というくだりは、「エクソシスト」のリーガンを思い出しました

ここからちょっとネタバレします

    ↓




父は、家族の誰か一人を殺さないと、父以外の家族全員が死ぬとマーティンから説明されます
それは、

1.手足がマヒしていく
2.食欲がなくなる
3.目から血が出る
4.死ぬ

という段階で起こるのだと言います
父は誰を殺したらいいか苦悩します

ここで、普通なら母親が、子供たちのためなら私が、って手を挙げるとこなんですけど、彼女はそんなことしません
「私たちはまだ子供を作れる、殺すならキムかボブにしましょう」
耳を疑うような言葉を発します
息子や娘も急に自らの命惜しさに、父親に媚を売るようになります
序盤の愛情たっぷりの家族の情景とは一体なんだったのか

あと、スティーブンの秘密を探るために、同僚の麻酔科医のマーティンに色仕掛けでアナが迫るシーンがあります
てっきり身を委ねるのかと思っていたら、そこ、手コキかよ!!

そして、誰も選べないスティーブンは究極の方法を選択します
ファッ!?スイカ割り大会ですか!?
でもあれって、誰かが死ぬまで家中穴だらけになっちゃうと思うんだけど、くじ引きとか、他に方法はなかったのか

コレ、普通に殺人事件だよね、捜査はされなかったのか、捕まらないのか気になります

ヨルゴス・ランティモス監督初鑑賞です
この監督さん、かなり好みかも、今後注目して行きたいです
あと、マーティン役のバリー・コーガンさんの怪演が光っていました
ギリシャ神話については、今後、勉強したいなと思いました

以上です