カポERROR

聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディアのカポERRORのネタバレレビュー・内容・結末

3.8

このレビューはネタバレを含みます

☠検証☠
【人間は7時間33分ノンストップで、ヨルゴス・ランティモスの精神攻撃を受け続けられるのか?/その③『聖なる鹿殺しキリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア 』】

ヨルゴス・ランティモスの拷問、三本目にして最も悪名高い『聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア』の登場である。
前回同様あらすじは割愛するので、概要はFilmarksのあらすじ欄を参照頂きたい。
初めにはっきり言っておこう。
本作、今回のヨルゴス・チャレンジ4本の中で、断トツに精神を削られる噂通りの最凶作だった。
以下、本作のトピックスに触れるが、今回は少々R18表現を交えるので、NGな方はそっ閉じして頂きたい。

まずは何と言っても、美の改造人間ことニコール・キッドマンの妖艶かつ迫真の名演だ。
現在、御歳57歳。
もう少しで私の熟女センサーが反応する還暦を迎えることを考慮すれば、その美への姿勢とこだわりには脱帽である。
そんな彼女、ベッドで無防備に横たわるシーンもお色気満点なのだが、個人的にはビル・キャンプ演じるマシューに車中で手淫を施すシーンが最も衝撃的だった。
私は過去、あれほど高速且つ力強い手コ〇を見たことがない。
『聖なる鹿殺し』ならぬ、『性なるシコ殺し』とはこれ如何に。
私だったら…瞬殺は想像に難くない。
マッコールに9秒で殺られるより、ニコールに0.9秒で殺られる方が幸せではないか。
ありがとうニコール。
『アザーズ』ならぬアザ━━(*゚∀゚*)ゞ━━ス!!

そしてそして、本作の肝と言えばマーティン役のバリー・コーガンの怪演である。
『ダンケルク』や『エターナルズ』で見てはいたのだが、これ程無機質なサイコマインドを完璧に表現するとは…。
マーティンの存在こそが、本作の不穏な空気の拠り所なのだ。
故に、バリー・コーガンが本作を傑作たらしめているとも言い換えられる。
彼に惜しみない拍手を贈りたい。
嗚呼、だが、どうか私には近づかないでくれ。
彼の目がただただ底なしに恐ろしく、いつまでも夢に見そうなので…この歳で毎夜チビりたくはない。

さて、本作が他のヨルゴス・ランティモス監督作品を差し置いて、突出した問題作と言われる所以は、人間の持つ欲深い業とドス黒い利己的な深層心理を、これでもかと言うくらい生々しく毒々しく描ききっているからと言えよう。
確かに、「家族の誰か一人を殺さなければ、自分以外の家族全員が死ぬ」という、極めて理不尽な設定を成立させているのはオカルト要素に他ならない。
だが、その点は敢えて深掘りせず、あくまでその様な境遇に直面した人間のとる行動にのみフォーカスすることで、上述の闇深い人間の心理の描出に成功している。
未だ幼いボブが、自ら髪を切り、父親のもとに這って行っては、「花壇の水やりをして良い子になるよ(だから僕を殺さないで)」と命乞いをするシーンは、狂おしい程に胸を締め付けられた。
もしも自分が父親のスティーブンだったなら…一体どのような選択をしただろうか。
想像しただけで恐ろしくなるのだ…正解など存在せず、答えられるはずがないのだから。

そして、私的に本作中最も悪魔的に恐ろしかったシーンはラストだった。
ダイナーで座って食事をするスティーブン達家族。
そこに息子の姿はもうない。
だが、彼らの表情には苦悩の痕跡など微塵もないのだ。
撃ち殺した息子など、あたかも最初から居なかったかのように、一家は淡々と店から立ち去る。
それを見つめるマーティン。
果たして、本当に恐ろしい存在は誰だったのだろうか。

本作は、類まれな問題作であると同時に、ヨルゴス・ランティモス監督の名を世に広く知らしめるきっかけになった作品とも言える。
今回の4作品の中で、私の評価は第2位だ。(スコアに大差はないが。)
その精神攻撃の破壊力は、他の追随を許さず、3作品を見終えて我がHPは残りわずか10/100。
残る一本『女王陛下のお気に入り』に私の精神が耐えられたのかどうか、次回レビューを乞うご期待。(今宵はもう遅いのでまた明日にでもUPしよう。)
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